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オンラインとオフラインの融合が進むアメリカ大手企業たち~アマゾン、ナイキ、ニーマン・マーカス、ノードストローム~

2019年10月31日
※掲載内容は公開日時点の情報です。現在と異なる場合がございます。
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アメリカでは、オンライン(EC)購入の増加という消費スタイルの変化による大手小売業の倒産、店舗縮小のニュースが久しく報じられています。そして今、生き残ったリアル店舗は、オンラインサービスやデジタルテクノロジーを駆使して進化を遂げています。アメリカの中でも最先端の小売がしのぎを削るニューヨークで、オンラインとオフラインの融合が進む企業を紹介していきます。

オンラインとオフラインの融合が加速するアマゾン

巨大EC・Amazon(アマゾン)の影響によりリアル店舗の売上が激減するという「アマゾン・エフェクト」。この言葉が広がった当初は「オンライン(EC)」VS「オフライン(リアル店舗)」という図式でしたが、アマゾンはオンラインにとどまらず今やオフラインにも進出し、全米3位の小売業となりました。

アマゾンは、リアル書店「Amazon Books(アマゾン・ブックス)」に始まり、アマゾンのECで高レビューの商品を集めた「Amazon 4-Star(アマゾン4スター)」など新業態のリアル店舗を次々と展開。オーガニックスーパーのホールフーズマーケットを傘下に収めて2017年には450超の店舗網を形成しました。

アマゾンのリアル店舗は、オンラインでのサービスやデジタルテクノロジーをふんだんに導入しているのが特徴です。

その代表が無人コンビニとして話題となった「Amazon Go(アマゾン・ゴー)」。アプリにあるQRコードをスキャンして入店すれば、商品を購入する際にはレジを通さずに退店できます。レジ待ちが大きなストレスとなるアメリカにおいてはレジ不要のスピードは感動を生み、また人種のるつぼであるニューヨークにおいて会話せずに購入できるという便利なスタイルが注目されています。

傘下のホールフーズマーケットでは、アマゾンプライム会員に向けて特別価格や豊富なサービスを提供。フードデリバリーや、アプリでのクーポン取り出し、アマゾンロッカーによるオンラインショッピングの商品受け取りなど、“新サービスの提供”と“従来型サービスのスマート化”に取り組んでいます。

オンライン・オフラインという区分はもはや過去のもの

アマゾンがリアル店舗でオンラインのサービスを提供しているように、今や、オンライン・オフラインはシームレス(垣根が無いこと)となり、その区分さえも過去のものとなっています。シームレスとなったきっかけはスマートフォンとアプリの存在でしょう。スマートフォンとアプリにより、オンラインでの機能をリアル店舗に導入できるようになりました。そうしたなかで、とくに抜きんでた施策を行っている企業・ナイキを紹介します。

ナイキは、オンライン(EC)とリアル店舗が完全にシームレスというより、オンラインが基軸でそのアウトプットの方法の一つがリアル店舗という印象です。
ECで気に入った商品については近隣店舗の在庫を表示し、取り置きも可能。マンハッタンのミッドタウンにある旗艦店では取り置き商品を受け取れるロッカーも設置しています。またアプリを使用して、スタッフの呼び出しや、オンライン決済で店頭商品の購入も可能です。さらに旗艦店では、リアルイベントの他にスニーカーのオンラインカスタマイズサービス「NIKE BY YOU」を使用したコンサルティングがあります。
オンラインで行うNIKE BY YOUはすべてユーザーで完結しますが、店頭であればNIKE BY YOUを利用した細やかなコンサルティングが受けられるのです。このようにナイキのリアル店舗では、「ECだけではできないリアル体験を提供すること」を徹底しています。

オールドスタイルな流通業も改革進む~百貨店のデジタル戦略~

このような小売業の変化に遅れをとっていたのが百貨店企業でした。しかし現在は各社デジタル戦略を強化し、ナイキのようにリアル店舗を「体験型店舗」として磨きあげています。

試着室にデジタル技術を投入したニーマン・マーカス

2019年3月に、話題の新開発エリアであるハドソンヤーズにオープンした高級百貨店NEIMAN MARCUS(ニーマン・マーカス)では試着体験にデジタルテクノロジーを採用。試着室に設置したタブレットで、照明の変更や商品情報の確認、セールススタッフの呼び出し、決済までを行うことができます。さらに、「ニーマン・マーカス・ライブ」というファッションショーやサイン会などを開催できる広場を設け、体験の場を拡充しました。

EC連動により“直接売らない店舗”を出店したノードストローム

アメリカ大手の百貨店Nordstrom(ノードストローム)では、ECと連動し利便性を提供しています。直接売らない小型店舗「Nordstrom Local(ノードストローム・ローカル)」を小商圏立地に出店。ノードストローム・ローカルでは、直接服を売らない代わりに試着室を充実させ、在籍するパーソナルスタイリストに無料で相談できるサービスを行っています。さらに近隣の住民に対しECで購入した商品の受け取りや洋服修繕、ラッビングサービスなどを提供しています。もちろん、店舗で商品を気に入ればECアプリから購入することができます。また、マンハッタン初となるプロパー店「ノードストロームメンズストア」では店員を介さずにタッチパネル操作のみで簡単に返品できる返品ボックスを設置し、EC客の店頭送客を行っています。

顧客の高齢化、大きすぎる規模により改革の遅れが指摘されてきた百貨店ですが、生き残った企業ではオンラインやデジタルを機軸にしてリアル店舗と融合する改革が進んでいるのです。

まとめ

以前は、リアル店舗だからこそできることを追求するのが、小売業の生き残りの道とされていました。しかし、今やオンライン(EC)にできないことはどんどん無くなっています。買い物をしたいときにはまずECをチェック。それでは解決できない時にリアル店舗に足を運ぶというスタイルを取る消費者が増えてきています。リアル店舗での問題解決力、ワクワクする体験提供力はますます求められるようになっていくでしょう。


執筆者: 山中コンサルティングオフィス代表 山中 健
大手百貨店、外資系ブランド、大手経営コンサルタント会社を経て、コンサルタントとして独立。ファッションビジネス、百貨店、SC(ショッピングセンター)業界などにおいて、マーケティングやMD、リテールのコンサルティングを手掛ける。

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