2020年01月15日

お役立ち情報 アメリカ企業に見る!店舗の雑務までを支えるデジタルテクノロジー

オンラインとオフラインが融合し、進化を続ける小売業態。そのなかで浸透し拡大する仕組みやサービスがあれば、泡のように消えていくサービスもあります。その差は何でしょうか。それは顧客や事業者にメリットがあるかどうかです。顧客にとってのメリットとは買い物が楽になること、事業者にとってはコストダウン、もしくは売上アップになることがまず挙げられます。今どのような仕組みやサービスが生まれ、どれが広がっていくのか、アメリカ小売業の事例をもとに考察したいと思います。

快適を目指して変化する会計のあり方

「買うまではじっくり考えて、買った後は早く帰りたい」。この心理は現在も万国共通です。

日本のように、店員がレジや会計を素早く済ますことができる国は稀(まれ)です。小売の先進国とされるアメリカでもスーパーなどの客数の多い業態は長いレジ待ちが当たり前です。そこで生まれたのがセルフレジ。これにより顧客のストレスを無くし、店側はキャッシャー(現金出納係、レジ係)や金銭管理のコストを減らすことができます。アメリカではもはやスーパーやドラッグストアでセルフレジの設置は当たり前で、「Urban Outfitters(アーバンアウトフィッターズ)」のような流行に敏感な若者をターゲットにしているアパレルショップでもセルフレジを設置しています。

同じく、日本でもセルフレジが普及しつつありますが、スーパーマーケットのような買上点数の多い業態では、顧客が一つひとつスキャンするのは一苦労。そこで今は店員がスキャンし、決済だけを顧客が精算機でするという日本式の「セミセルフレジ」が広がりつつあります。

一方のアメリカでは、さらに先んじて「レジ無し」の店舗が珍しくなくなっています。「Amazon Go(アマゾン・ゴー)」がその代表格で日本でもその存在は広く知られているでしょう。しかし、「レジ無し」の業態として「Dirty Lemon(ダーティー・レモン)」にも注目したいところです。

ダーティー・レモンは、ブルックリンで生まれた健康ドリンクブランド。ミレニアル世代をコアターゲットにしており、ファッショナブルでオンラインを駆使している点も特徴です。ダーティー・レモンは、アプリと多数の監視カメラで管理しているアマゾン・ゴーと異なり、SMSによる自己申告で買い物をするのです。QRコードを読み取り会員登録するのは今風ですが、その後はSMSでのチャットを通じて決済します。

デジタルテクノロジーやオンラインを活用していますが、昔の日本にあった無人販売所、つまりお金を入れて新聞や野菜を買うという性善説にそった購買モデルと同じです。これからも客層や商品属性、買上点数などによってさまざまな「レジ無し」店舗が増えていくでしょう。

AI接客を超える人的サービスが不可欠

消費者の高度化は、現在ますます進んでいます。消費者の高度化とはつまり、興味のないことはほとんど知らず、自分の興味あるものはとことん調べ専門家レベルになっていくことです。こういった人たちを、私は「自分専門家」と呼んでいます。わからないことがあったらすぐに調べられるインターネット環境、自分が興味ある情報はどんどん入るSNSなどがこの「自分専門家」をつくりあげたとも言えます。

このような「自分専門家」のお客様には生半可な知識では通用しません。個別対応ができなければセルフでも良いと思っている消費者も多いのでしょう。かつて接客販売を基本としていた衣料品小売でも同様の傾向があり、そこで生まれたのが「ファストファッション」という業態でした。

しかし、今は苦戦が伝えられているファストファッションを尻目に、さまざまなサービスが生まれています。その一つが「スタイリストコマース」というECのサービスです。スタイリストコマースでは、まずAIでお客様の好みを探ります。次々とファッションの画像を見せ、どちらが好きかを顧客に尋ねます。その結果を踏まえ、スタイリストコマース事業者は顧客の好みを把握し、チャットによりニーズを深掘りして商品を提案し、販売につなげるというものです。このように、「タッチ&フィール(触って確かめる)」が必須だった衣料品小売でも、オンラインによるAI接客で提案する例が次々と生まれています。

ところが、このAI接客がまだ克服できていない領域があります。それは、潜在ニーズの把握です。AI接客では、お客様が自分で把握しているニーズには対応できますが、ユーザーが自覚していないニーズへの対応ができません。潜在ニーズの領域を、人的サービスで行うことが今は必要です。オンラインであればチャットサービスで、さらにそれでも解決できないサービスはオフライン(対面)で行います。その代表的なのがスタイリストコマース事業者の「Trunk Club(トランク・クラブ)」です。トランク・クラブは、アメリカの大型百貨店チェーンNordstrom(ノードストローム)傘下の企業で、オンラインでの人的コンサルティングに加え、「Clubhouses(クラブハウス)」という対面でのコンサルティングも行っています。

昔からパーソナルショッピングというコンサルティングサービスはありましたが、顧客台帳とスタイリストの知恵によるものであり、そのノウハウは暗黙知と言えるものでした。現在では、オンラインに蓄積されたデータを使い形式知化し、初期ニーズや好みの把握はできるようになりました。それらに基づいた潜在ニーズの引き出しを行うことが今は求められているのです。

このようにAI接客により基礎情報や顕在ニーズをストックし、それをベースに対面でのカウンセリングを行い、潜在ニーズを把握していくというのがこれからの接客のあり方でしょう。

買い物のストレスをデジタルテクノロジーが解決

購買段階で顧客はさまざまな経験をします。セルフで買うとしても、値札と商品を見比べたり、カゴに持って店内を回ったり、会計をしたり…。この購買段階で必ず顧客が経験することをいかに便利に、快適に提供できるのかを考え、テクノロジーでできることはテクノロジーで解決する、ということがこれからの小売業に求められるでしょう。

テクノロジーによりエンターテイメント性を提供する例もありますが、生活商業の場合は一回で飽きてしまいます。そのため、自店で必ず経験することは何かを探り、人的サービスでは安定できないこと、店員にとってストレスになることなどはテクノロジーで解決するのです。アメリカでは今そのような開発が主流となっています。

NIKE(ナイキ)が行っているアプリによる取り置きやスタッフの呼び出し、ノードストロームの返品ボックス、ラウンジサービスを行う3DEN(エーデン)の時間延長アラーム、Bloomingdale’s(ブルーミングデールズ)の自店会員への勧誘など、どれも顧客、店員双方にとってのストレスになりやすいものをテクノロジーで解決しています。

皆様の店ではどのようなストレスを顧客や店員が抱えているでしょうか。それを知ることが有益なデジタルテクノロジー利用につながると思います。

まとめ

お伝えした通り、デジタルテクノロジーは顧客の買い物のストレスと店員の雑務を減らすように使用し、さらに店員はAIやデジタルテクノロジーによる情報をベースとして高パフォーマンスのサービスを行う時代となります。オンラインもオフラインもシームレスになり、店舗は購買のための重要なタッチポイントとなっていくでしょう。


執筆者: 山中コンサルティングオフィス代表 山中 健
大手百貨店、外資系ブランド、大手経営コンサルタント会社を経て、コンサルタントとして独立。ファッションビジネス、百貨店、SC(ショッピングセンター)業界などにおいて、マーケティングやMD、リテールのコンサルティングを手掛ける。


あなたにあった集客方法をご提案します。
お気軽に資料ダウンロードやお問い合わせください。