コラム
販促・集客
お客様とのコミュニケーションを高める店舗ディスプレイのコツ
目次
消費者の購買意欲を高めるために重要な店舗ディスプレイ。商品を購入してもらうためには、お客様の行動の特徴を踏まえて戦略的に店舗ディスプレイを行なう必要があります。さらには、お客様を意識した店舗ディスプレイは、お客様とお店のコミュニケーションでもあるのです。そんな店舗ディスプレイのコツを見ていきましょう。
入店するきっかけを作る ~入口はお客様との最初のコミュニケーション~
お店の第一印象となるのが、外から見える「入口」です。入口をディスプレイや装飾で演出することは、お客様とお店との最初のコミュニケーションとも言えます。入口で「気になる」「入ってみたい」と思ってもらえるように、季節感を感じさせるディスプレイを設置したり、お店のコンセプトに合った装飾を施したりすることが重要です。
北九州市門司駅近くのめがね宝石・時計販売のヨシダでは、入口のウィンドウにクリスマスであればカラフルなイルミネーションやツリーを飾り、2月には、ひな人形やさげもん(吊るし飾り)の装飾で彩ります。華やかなウィンドウに惹かれて来店するお客様も少なくなく、実際に、子どもの学校の送り迎えでヨシダの前を何度も通り過ぎていた母親が「一度入ってみたかった」と来店され、メガネを購入して顧客につながった事例もあります。
また、基本である入口の整理整頓と清潔に保つことは欠かさないようにしましょう。
売場に誘導し回遊させる ~お客様の視線と動線を意識~
ここでは売場全体の話をしていきます。重要なのは、お客様の視線で店内を見ることです。お客様は目線の高さの光景によって、無意識に全体の第一印象を判断しています。
お客様の視線を踏まえて、立体のひな壇のように売場が見渡せるようにディスプレイを意識しましょう。入店に繋がるポイントは、お客様が入店したときに視野に入る“手前の陳列”と“売場奥の高い場所の陳列”における演出です。この2つでは、売場のテーマに沿った商品や宣材を置いて、アピールしたい商品やお店のコンセプトが伝わるようにしていきます。
例えばユニクロでは、入店してすぐに季節ものの新商品や新商品を着せたマネキンが設置されています。店内の奥には、高さのある棚やスペースにさまざまな種類の衣類が並べられていて商品の豊富さが伝わります。天井が高い店舗だと、大きな新商品のポスターが並べられており、目に止まりやすいようになっています。入口近くのディスプレイはもちろん、離れた場所からも見える大きさを意識して商品や関連する装飾品を選ぶことが大切です。
お客様は気になる商品があれば、お店の奥に入ってみたくなるものです。多くの方は右利きなので、右手で商品が取りやすい動線に売れ筋商品や目玉商品などが関連していくように陳列することで、お客様の回遊を促しましょう。
お客様のイメージを膨らませる ~使用シーンを想起させる演出~
魅力的な商品が並べてあってもそれ単体では、お客様にとっては購入後にその商品を使用するイメージが膨らみづらいことも少なくありません。その商品がお客様の生活の中でどのように使われるのかを想起させる演出を行なうと購買意欲を高めることにつながります。
参考にしたいのが家具量販店のイケアです。イケアの店内は、子どもの部屋や夫婦の部屋、キッチン、玄関、トイレといったさまざまなコンセプトを模したスペースが設けられていて、イケアの商品を実際に設置し、購入後のイメージを膨らましやすいようにコーディネートされています。
洋服店であれば、マネキンを使うことでお客様の使用するイメージがより鮮明に見えてくるでしょう。
このように、お客様の購入後のイメージを高めるコーディネートをしたディスプレイも取り入れるとより効果的で、さらにお店全体のイメージも生まれます。
ここで気をつけておきたいことは、人が商品を見たときに最初に認識する「色」です。人は一度に多くの色を認識すると混乱してしまうので、コーディネートでは3色ぐらいにまとめると良いでしょう。 例えばクリスマスをコンセプトとする際には、赤、白、緑がイメージできますね。メインカラーを赤、サブカラーを白、ポイントカラーを緑に決めてコーディネートするだけでも色のメリハリができ、色だけでクリスマスと商品を関連付けるイメージがしやすくなります。
商品を手に取ってもらう ~ゴールデンゾーンとZの法則~
次に商品を陳列する棚を見ていきましょう。立っているときの目線の高さを中心にしたディスプレイが大切です。お客様は、手に取りやすい「ゴールデンゾーン」の商品を中心に購入する傾向があります。ここで言う「ゴールデンゾーン」とは、身長マイナス10cmのちょうど目線のあたりの高さです。女性であれば150cm程度、男性であれば160cm程度がゴールデンゾーンと言えるでしょう。そのため、もっともアピールしたい商品はゴールデンゾーンに近い高さに置くと注目されやすくなり購入につながります。
また、人の目の動きは“Z”の字を描くように、左→右→左下→右下と視線を移動させることが多いです。これは「Zの法則」と呼ばれています。例えば、ケーキ屋のディスプレイをイメージしてみましょう。さまざまなケーキが2~3段に分かれてディスプレイされています。このときのポイントは、お店の目玉となるケーキや高額なケーキを上段に、定番のケーキや手頃なケーキを下段に並べることです。そうすることで、視線の最初から購買意欲をそそる商品が目に入ります。値段が高くて悩んでも、次に視線が移動した先の下段には手頃な商品が並んでいるので、有力な選択肢として購入を検討してくれるようになるでしょう。
まとめ
お店の入口から売場の空間全体、商品の高さ、並べ方など、店舗ディスプレイにはいくつかのコツがありますが、お客様のことを考慮したそれらの店舗ディスプレイは、お店からお客様に対する“言葉を使わないコミュニケーション”の役割を担っています。魅力的なお店、居心地のよいお店と認識してもらえるようになれば、結果的に売上アップにつながることでしょう。そのためにも、お客様とのコミュニケーションを意識した店舗ディスプレイづくりに取り組んでみてはいかがでしょうか。
<執筆者プロフィール>
アバンダンスライフスタイリスト 余田 豊美
衣食住の撮影スタイリスト、ディスプレイヤー、の経験後、商品、店舗アドバイザーを行う。 商品の物語を伝えモノから繋がる人と人のコミュニティー、ファンが集まる空間作りを指導。ディスプレイ、撮影スタイリング、商品、店舗、構成、レイアウト、販促、集客ワークショップ企画、SNSの活用により、アップサイクルファションワーク、葛の活用美容と健康ワークを実施。