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商品を売れる販売員の接客術!売ろうとせずに、お客様に欲しいと言われる方法は?
目次
こんにちは、成田直人と申します。私は、元ABCマート日本一販売員という肩書きを元に、23歳で店舗向けコンサルタントとして独立し、一部上場企業を中心に250社以上のクライアントを担当してきました。ここでは、私の経験から“売れる接客”について論じていきます。
売れる販売員だけがしている考え方と習慣
なかなか商品が売れない販売員がいれば、次々と商品を売れる販売員もいます。その違いは何なのでしょうか。売れる販売員がしている考え方と習慣をお伝えします。
売れる販売員の考え方は「自責」
売れる販売員は「どうして売れなかったのか?」と原因を自分の行動にフォーカスします。このような「自責:自分に原因がある(対義語が他責:人や環境に原因がある)」の考え方をもつ販売員は試行錯誤をしながら日々のセールスをブラッシュアップさせて自然と目標達成に向かっていきます。
課題に向き合う「習慣」
売れる販売員は自責の考え方から売れない結果と向き合うので、自分の課題が見つかります。そして、この課題を能力開発で解決する方法を選択します。
例えば、お客様から聞かれた商品についての特徴がわからなかったとしましょう。その場合は、「ちょっと知識習得が甘いな」「この分野の知識はよく聞かれることだから、もう一度学び直そう」と勉強をします。もし「アプローチが苦手」という課題を見つけたならば、アプローチに関するビジネス書を探したりして、課題解決の糸口を積極的に模索します。
このように、売れる販売員は“売れない事実”と向き合い、「どうしたらお客様が気持ちよく商品を購入できるか」を日々追求する習慣があります。
スキルよりも重要な商品知識
売れる販売員に「一番重要なスキルは何?」と聞けば、「スキルの前に商品知識」と答えるでしょう。なぜならば、商品知識なくしてスキルは役に立たないからです。どれだけコミュニケーション能力が高くてもお客様が知りたいことを的確に伝えることができなければ信用を得ることはできません。商品知識を完璧に習得したうえで、各スキルを磨いているのです。
お客様から欲しいと言われる接客術
適切な努力を重ねているからこそ結果的に売れるようになるのですが、売れる販売員には共通している大切な価値観が2つあります。
1.自分が嫌なことはお客様にしない
2.自身が掲げる理想の販売員に近づける
というルールです。
では具体的にどうすればお客様にとって理想的な販売員になるのでしょうか。 それは、売り込まないということです。
商品を売ろうとする販売員は結果的に売れない
店頭販売では、商品を売ろうとする販売員は商品が売れず、商品を売ろうとしない販売員は結果的に商品が売れています。あなたはこの現実を受け入れられますか?
「えっ?これまでずっとクロージングをかけてきたのに」と思うかも知れません。残念ながらその売り方はもう古いです。少し前までは強引に販売をしてもネットで叩かれることもなければ、ライバル店も少ないのでお客様が途切れることもありませんでした。「よろしければ着てみてくださいね」「よければ履いてみてください」とアプローチして、「とてもお似合いですよ、在庫も残りわずかなので」と購入を決心させるように売り込む、というのが主流でした。
しかし、時代は変わり旧来のクロージング型のセールスが全くと言ってもいいほど機能しなくなっています。なぜならば、「接客が強引」といった噂はネットですぐに拡散されますし、ネットショッピングにより全国の店から簡単に商品を買えるようになったお客様は「この店で購入しなくても他の店で購入すればいい」という心持ちでいるからです。すでに現場で体感されているかもしれませんが、店舗はお客様を選ぶ側から選ばれる側に完全に回りました。
一方、販売員もプライベートではお客様でもあります。売れる販売員は、自分がお客様の立場のときの体験を大切にしています。「この強引な接客は嫌だな……」と思ったら自分も同じ接客をしないように気をつけます。お客様が嫌と感じやすい接客の最たるものが「アプローチ」と「クロージング」ではないでしょうか。では、お客様から嫌がらず、欲しいと言われる方法を紹介します。
【アプローチ】お客様から声をかけられるようにする2つの工夫
お客様は買い物中に「声をかけられたくない」と思う人が多いです。それにもかかわらず、声をかけることを繰り返すのでお客様に嫌がられているわけです。では、どのようにすればいいのでしょうか。
それは、声をかけることをやめて、「声をかけられる状態を作ること」です。お客様が商品のことについてもっと知りたくなるPOPなどを掲示すること、お客様が「この商品を詳しく知りたい!」と思ったときに視界に販売員がいること、この2つが声をかけられる条件になります。
「商品に気づき(注意付け)→商品に興味を持ち→欲しい気持ちを駆り立てる」という流れを生む売り場作りをすれば、声をかけなくてもお客様のほうから声をかけていただけるようになるのです。
【クロージング】お客様の「欲しい」を引き出すカギは質問力
クロージングは、はっきり言って不要です。この話をすると多くの人が「えっ?」となるのですが、“クロージングをかける”という行為はお客様が商品やサービスに適切な価値を感じていないからするものです。「そんなクロージングは販売員の傲慢だ」と、私は思います。だからこそ、私はクロージングをかけられたくありませんし、かけません。
お客様の「欲しい」を引き出すことに集中します。その具体的な手法は提案力を磨くのではなく、“質問力”を磨くことです。
まず、「そのお客様はなぜ来店したのか?」「どんな商品を検討しているのか?」をヒアリングします。これを“現状確認”と言います。
次に、このままお客様が欲しいと思っている商品を売るのでは販売員が介在する理由はないので、「本当にこの商品やサービスでいいのか?」と評価します。現状確認をしているとお客様の立場になりきることができる(憑依状態)ので、プロ目線で検討します。商品知識があれば「このお客様の現状だったら、あの商品のほうが良いな」とたいてい気づくものです。
そのときに良いと思った商品をすぐに提案するのではなく、自分が薦めたい商品は現在検討している商品と何が違うのか、どんな価値があるのかを考えます。
その価値に気づかせるために潜在ニーズを引き出す質問をします。例えば「お客様、今検討している商品を実際に使うと、○○なリスクって考えられませんか?」と質問をしたとします。お客様が「たしかに……」と頷く、これこそが潜在ニーズが顕在化した証拠です。
そのときにお客様に良いと思った商品を提案します。さらに「お客様、今よりもこんなライフスタイルが築けたらいかがですか?」「今よりももっとよくなりますね!」とイメージを喚起させると、お客様は「想像を超える未来のイメージ」が描けるため欲しくてたまらなくなるのです。
まとめると、
「現状確認のヒアリング→憑依状態で検討中の商品を評価→潜在ニーズを引き出す質問→潜在ニーズが顕在化したら薦めたい商品を提案→未来のイメージ喚起」
という流れになります。
まとめ
誰しも、ネットショッピングで欲しい商品を安く買っても、興奮するほど感動することはないでしょう。しかし、店頭販売はプロ目線でお客様の購買リスクを察知する知識やもっと素敵な未来を築くアイデアがあります。そもそも、販売員がプロ目線のアイデアを持たなければ、お客様にとっては店頭で購入する価値がありません。売れる販売員になりお客様の想像を超える付加価値を提供できるように、自分の行動を顧みて課題に向き合い、知識を習得し、さらには質問力を磨いて店頭販売ならではの感動を創り出していきましょう。
執筆者: 株式会社FamilySmile 代表取締役 成田 直人
19歳ABCマートアルバイト個人売上日本一を獲得、22歳PCデポにて7か月で個人売上1億円を達成、2007年3月小売・サービス・飲食業専門コンサルティング会社FamilySmileを創業。年間200回10000名以上をトレーニングし、2017年3月で10周年を迎え受講生も10万名突破。著者としても接客業・店長向け書籍を中心に13冊(海外2冊)の書籍を出版し、累計10万部を超える。2013年から海外進出も果たし、ハワイ・シンガポールにて日本のおもてなしを世界に広げる国際的なコンサルタントとしても活躍中。