コラム
販促・集客
ウェザーマーチャンダイジングから読み解く 2020年1月販促のポイントとは
目次
1.季節指数、ウェザーマーチャンダイジングとは?
日本は縦に長いのでエリア差はあるのですが、今年の7月の前半は、特に関東圏では日照不足傾向となり、東京都心では、7月1日~12日までの日照時間は「5.2時間」とのことです。 ちなみに去年の2018年7月の気象庁発表データをチェックすると、下記の通りでした。
○北・東・西日本では気温がかなり高かった
太平洋高気圧の勢力が日本付近で強かったため、北・東・西日本では月平均気温がかなり高く、東日本の月平均気温は平年差+2.8°Cとなり、7月として1946年の統計開始以来第1位、西日本では第2位タイの高温となった。また、23日には熊谷(埼玉県)で日最高気温が41.1°Cとなり、歴代全国1位を更新した。○「平成30年7月豪雨」が発生
梅雨前線や台風第7号の影響で、西日本を中心に全国的に記録的な大雨となり、「平成30年7月豪雨」が発生した。また、北日本日本海側と西日本太平洋側および沖縄・奄美で、月降水量がかなり多かった。○東日本と西日本日本海側では日照時間がかなり多かった
気象庁 平成30年8月1日発表 7月の天候
東日本と西日本日本海側では、太平洋高気圧に覆われて晴れた日が多かったため、月間日照時間はかなり多かった。東日本日本海側の月間日照時間は平年比179%となり、7月として1946年の統計開始以来第1位の多照となった。
今のところ2018年の極端な猛暑に対して、今年の7月は極端な冷夏となり、今後の小売業・メーカーの業績に与える影響が気になるところです(特に季節商品の動向)。
小売業の販促計画を組む上での重要な要素に、「季節指数」と「ウェザーマーチャンダイジング」があります。
「季節指数」とは、季節による売上の変動を数値化したもので、その企業の過去の売上データから算出します。よく総務省の『家計調査年報』や各種食卓データ等との比較で「差異」を見るケースが多いですね。
「ウェザーマーチャンダイジング」とは、天気や気候による顧客動向の変化を事前に読み、売上向上につなげる販売促進計画の手法です。
最近は、世界的に異常気象なので、より一層従来の販促計画に「ウェザーマーチャンダイジング」の要素を取り入れる傾向が強く、SNSデータ分析等を含めた新たなサービスメニューを提案する企業も多くなりました。
さて、今回のお題は「2020年1月販促のポイント」となります。
2.1月の季節指数は低い!
1月は年末年始の反動から、季節指数が低くなりがちです。そのため、しっかりと販促計画を作ることが重要となります。
そこで2019年の小売業の動向、気象庁のデータ、主だった企業が出しているチラシ情報・販促・MDを確認して、他社がどのような手法でウェザーマーチャンダイジングをしているのか確認してみましょう。
3.2019年1月の主だった「小売業」の動向
2019年1月の主だった小売業の売上高前年比を見てみましょう。
1)チェーンストア
販売統計 総販売額前年同月比 -3.4%
※日本チェーンストア協会データ https://www.jcsa.gr.jp/public/statistics2019_01.html
日本チェーンストア協会が発表した2019年1月のチェーンストア販売概況によると、食料品は相場安もあり農産品が苦戦し、衣料品も伸び悩みました。また、住関品はまずまずの動きでしたが、総販売額の前年同月比(店舗調整後)は、マイナスとなりました。
2)全国百貨店
売上高概況 総額 前年同月比 -2.9%
※日本百貨店協会データ https://www.depart.or.jp/store_sale/files/201901-Jgaikyo1.pdf
日本百貨店協会が発表した2019年1月の全国百貨店売上高概況によれば、前年同月比で2.9%減と3か月連続のマイナスとなりました。初売・クリアランスセールが不振だったことに加え、好調だったインバウンドも、米中摩擦等海外要因による先行き懸念や、中国の景気減速・免税品に対する規制強化も影響し、苦戦しました。
3)コンビニエンスストア
店舗売上高 既存店ベース 前年同月比 0.8%
※日本フランチャイズチェーン協会 https://release.nikkei.co.jp/attach_file/0503209_01.pdf
日本フランチャイズチェーン協会が発表したコンビニエンスストアの既存店売上高は、2019年1月のカウンター商材やおにぎり、調理麺、惣菜、冷凍食品等の商品が好調に推移し、全店・既存店ともに売上高が前年を上回り、3か月連続のプラスとなりました。
全体的な概況は、「暖冬で季節商品の動き悪かった」「米中摩擦・中国景気減速でインバウンドがマイナス」が挙げられます。
4.2019年1月の「気象庁」発表データ
気象庁が発表した2019年1月の気候データを見ると、暖かい空気に覆われやすかったため、東・西日本と沖縄・奄美では気温が高く、東・西日本の日本海側の降雪量はかなり少なくなりました。
また、北・東日本太平洋側と西日本日本海側では、降水量がかなり少なかった一方で、沖縄地方では、南からの湿った空気の影響を受けやすかったため、降水量が多くなりました。このことから小売業界では、季節商品やホットメニューの動きがイマイチでした。
5.2019年1月主だった企業 チラシ企画をチェック
大手GMS、SMを中心とした前年(2019年)の1月チラシの企画を、「ほぼ」出現率が高い順番にピックアップしてみます。
(1)鍋もの (2)大寒
(3)お正月ごちそう・初売り (4)成人の日3連休
(5)いちごの日 (6)受験生応援
(7)濃い味(焼肉・お好み焼き・カレー・中華)
(8)七草 (9)うまいもの市・産直(タイ・長崎)
(10)恵方巻・節分 (11)ホットメニュー・ドリンク
1月のチラシ企画上位は、やはり「鍋もの」「大寒」がワンツートップとなりました。ところが今年の1月は、「暖冬」だったため、上位企画の売上げは不振であったと推測されます。
また「濃い味」企画は、年末年始の「鍋もの」「お節料理」等の「和調味料」」中心のメニューの反動で「洋調味料」「中華調味料」等を使用したメニューの人気が高まります。食卓データなどでもその様な傾向が確認できます。「うまいもの市」の「タイ」企画のエスニック料理の提案も、その流れと考えられます。
さらに、去年は、「大寒」のチラシタイトルにユニークなものが多かったようです。小売業の注目企業をいくつかピックアップしてみます。
1.大寒謝祭(イトーヨーカドー、ベルク、阪急オアシス)
2.大寒 旨さに大寒激(マルエツ)
3.大寒 寒極まる(ベイシア)
去年は、「大寒」企画に相当「気合い」を入れた企業が多かったことが分かりますが、残念ながら「暖冬」傾向でした…。
6.2019年1月のリアル店舗の売場の販促・MDをチェック
また1月は季節指数が低いので、販促の打ち手を多くする必要があります。そこで「インストアプロモーション(インプロ)」ネタもピックアップしてみます。
(1)時短・簡便・パパッと (2)三日とろろ (3)新春スイーツ
(4)健康 (5)家のみ・祝い酒 (6)福袋
(7)年明けうどん (8)春野菜・柑橘 (9)女正月
(10)家族団らん (11)甘酒・スープ
去年の大手GMSでは、「働く女性・忙しいあなたにおすすめ 毎日が寒さ対策 あま酒・スープ 毎日がポカポカッ‼」のパネルで「甘酒」「スープ」がコーナー化されていました。
今や冬に限らず通年商品となった甘酒のアイテム・SKUを充実させて、トクホ・機能性食品なども含めて売り込みたいとことです。
また今年の年末年始の消費動向は、10月の消費税増税がどこまで影響を及ぼすかがポイントとなります。多くの小売業の経営者が、去年の年末から既存店売上高の前年比がダウントレンドとなったことを指摘しています。 特に、軽減税率対象外の「アパレル」「住関品」「酒」「外食」等の動向をチェックしましょう。
7.2~3月にあるイベントに備えるのも吉
1月は、早い時期から2月の「節分(恵方巻)」「バレンタインデー」「初午の日(稲荷ずし)」等のプレセリングや予約販売の仕掛けが多くなります。
去年当たりから「食品ロス(フードロス)」が消費者から問題視されるようになっていますので、企業側としてもチラシや自社アプリ等も活用して、より一層事前予約には力を入れることが重要です。2019年の小売業・飲食業の注目企業の「恵方巻・節分」のユニークなチラシタイトルを見てみると、
1.えほパーしよう‼(ベルク)
2.節分はおニクを食べる鬼退治 招福肉祭(スーパー三和)
3.恵方ピザ(ガスト)
などがありました。 スーパー三和の様に、最近の「節分」では「肉」企画も強化されます。「お肉(おにく)」=「鬼食う(おにくう)」に語呂を掛け合わせる企画が可能です。また、イトーヨーカドーの店舗によっては、今年も「恵方巻 只今のご予約ご注文数」をパネルで掲げていました。
2019年のバレンタインの話題のアイテムは、「世界で最も新しいチョコレート“ルビー”」でした。
2020年のバレンタインデーは「金曜日」ですので、11日(火)建国記念の日(祝日)の「ホームパーティー」と14日(金)の「ウィークデー(友チョコ・自分へのご褒美など)」のニーズを狙うことが肝心です。
8.1月単月の売上よりも2月3月に向けての準備を!
さて、2020年1月販促のトラエドコロの「まとめ」です。
(1)2019年1月は「暖冬」で「季節商品」の動きが悪かった。長期も短期も天候の予測は難しいのだが、2020年1月は、ギリギリまで情報を収集して、前年の暖冬の「反動」傾向も視野に入れてウェザーマーチャンダイジングを徹底することが肝心である。
(2)オリンピックイヤーのスタート月で、より一層メーカーの関連企画が多くなるので、店をあげて「便乗」する。
(3)10月の消費税増税の影響は、軽減税率や政府の対応策などの与件があるが、季節指数の低い1月の消費者の財布のひもはさらに固くなることが予測される。そのため、1月の王道企画と共に、インストアプロモーションを含めた販促の打ち手を増やすことが求められる。
(4)リアル店舗では、1月の初旬・中旬より「節分・恵方巻」「バレンタイン」のプレセリングが強化される。去年当たりから話題となっている「食品ロス」問題から、「恵方巻」はデジタルを含めた予約のインセンティブもライバル企業との差別化が必要となる。
(5)また長いスパンでは、3~4月の子供のお祝いごとに向けた「ハレの日」アイテムの仕掛けも強化したい。
<著者>
株式会社マーケティングラボ 代表取締役 中村 仁
東証一部上場スーパーマーケット勤務後にコンサルタント活動開始。2007年株式会社マーケティングラボ 代表取締役に就任。GMS・SM・メーカー等の「マーケティング」や公的機関の「派遣事業」等を中心に常に「リアル」「現場」に基づいた情報を提供。