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【第1回】競合店調査の実践的知識~競合店を調査するときの基本的なポイント~
目次
孫子の兵法に「彼を知り己を知れば百戦殆うからず」という言葉がありますが、これは敵と自分のことをしっかりと把握しておけば、何回戦っても負けないという意味です。競合店に勝つには、まず「負けないこと」が大切です。ここでは競合店に負けないため、ひいては勝つための必須事項である競合店調査の基本をお伝えします。
目を閉じたままライバルに勝てますか?
競合店に勝つために必要な競合店調査ですが、なぜ必要なのかを考えてみましょう。
ゲームを例にして考えると…
隣の国を攻め込んで領地拡大を目指す戦国シミュレーションゲーム。これは情報収集して努力すれば勝てるから面白いのですが、敵国の情報が見られなければ、出たとこ勝負で勝てるか勝てないかわからないので面白くありません。ライバルの情報を調べ、それに合わせて対策を講じる。
これは、シミュレーションゲームでも実際の商売でも共通する「勝利の必須事項」です。
現実世界ではライバルも競合店調査をしている
小売店でアドバイスを行う際、社長や店長の方に「最近はいつ競合店を見に行きましたか?」と聞いても、「ほとんど行ってない」と回答されることも多いです。理由を聞くと「狭い地域で顔見知りだから」「時間が無いから」などの声が返ってきます。
しかし、目をつぶって戦っている状況では勝てる戦も勝てません。商売はゲームでは無いリアルな戦いだからこそ、競合店調査が重要です。
現実世界では、ライバルも競合店調査をしてきます。つまり、自分が競合店調査をしなければ一方的に負けてしまう可能性もあるので、なおさら競合店調査が重要だと言えるでしょう。
競合店調査を行う目的
競合店に勝つためには、なぜ競合店調査が必要なのかをお伝えしましたので、次に競合店調査の目的を整理していきましょう。
お客様は比較して店を選んでいる
お客様に支持される、売れる店づくりには競合店調査が不可欠です。
お客様は身近にある店舗の中から自分に合った店を選びます。自分に合った店を選ぶ基準は品揃え、価格、接客などがありますが、お客様はそれらに加えて“他の店舗と比較”して店を選んでいます。競合店調査を行い、競合店を詳しく知ることで、初めてお客様に選んでいただくための対策を講じることができると言っても過言ではありません。
ライバル店と比較することで見えてくる自店の課題
競合店調査とは、一般的には商圏内にある競合店(ライバル店)の状況を調べることを言います。競合店を調査する際には、ただ闇雲に調べるのではなく、一定のルールを設定すると効率的かつ効果的に行うことができます。
一定のルールの基準は「お客様から見た比較のポイント」です。
お客様は「安い店」「品揃えが良い店」「買い物しやすい店」のような漠然としたイメージを持たれていますので、それらを比較しやすい「価格」「アイテム数」「店舗面積」「駐車場台数」などの項目に落とし込み、客観的に比較できる状態に整理します。そうすると「〇〇部門の品揃えが負けている」「〇〇部門の価格が高い」など、ライバル店と明確に比較することが可能となり、解決すべき課題が見えてくるでしょう。
競合店調査の基本ポイント
それでは、競合店調査の基本と言える「競合店の選び方」「調査のタイミング」「調査内容」のポイントを見ていきましょう。
調査する競合店の選び方
調査する競合店といえば、以前は商圏内にある同業種の店舗から選ぶことが一般的でした。今ではドラッグストア各社が食品を強化し、スーパーマーケットやコンビニエンスストアの競合となっています。同業種だけでなく他業種も含めて競合店を設定することが必要です。その際のポイントは“自店と類似していること”になります。例えば「顧客層が似ている」「品揃えが似ている」「立地が近い~立地が似ている」などが挙げられますが、一言で言えば「コンセプトが似ている店」と言えるでしょう。
ただし、あまり多くなりすぎると調査自体が大変ですし、多くの店と比較すると「A店には価格で負けている」「B店には価格で勝っている」「C店には接客が負けている」「D店は生鮮部門が強い」など、それぞれの店の特徴がバラバラで、改善への取り組みが整理できなくなりがちです。そのため、本当に顧客を奪い合っていると思われる2~3店舗ほどの競合店をメインに調査するのが現実的です。
その上で、何か特定の内容、例えば「生鮮を強化したい」「接客を強化したい」などの改善テーマがあれば、それに合った競合店を追加して調査するとより効果が期待できるでしょう。
競合店調査のタイミング
競合店調査を行うタイミングは業種によって異なりますが、売場状況の変化を把握できるタイミングを意識します。
品揃えが急に変化しない雑貨などの店であれば、月に1回や週に1回でもいいですし、一般加工食品が中心の店であればチラシが配られたタイミングでいいでしょう。生鮮食品が中心の店であれば最低でも1日1回、もっと言えば「開店時」「夕方のピーク時」など複数回にわたって調査することも効果的です。鮮魚部門や惣菜部門であれば、昼時と夕方では品揃えが大きく変化します。
ライバルの動きを適切に把握すればするほど課題が明確となり、より具体的な対策を講じることが可能となります。
競合店調査の内容
競合店調査には、大きく分けて2つの調査項目があります。商圏全体から見た立地、外から見た視認性、来店の容易さ、お客様の来店手段、駐車場の使いやすさなどの「店舗外の調査項目」と、品揃え、価格、部門構成、売場づくり、客層、客数、販売促進の特徴、接客、サービスなどの「店舗内の調査項目」です。
店舗外の調査については“お客様が店舗に来店するまでのプロセス”を把握することがメインとなり、店舗内の調査については“お客様が店内で感じる魅力や利便性、店舗が持つポテンシャル”を把握することがメインとなります。
どちらも店舗を比較する上で重要なポイントなので、細かく丁寧に調査していく必要があります。詳しい調査方法については、次回、紹介させていただきます。
まとめ
孫子の兵法の「彼を知り己を知れば百戦殆うからず」に続く言葉の中に、「彼を知らず己を知らざれば戦ふ毎に必ず殆うし」という言葉があります。これは、敵のことも自分のことも知らなければ必ず負けるという意味になります。どの店舗も負けたくありませんし、生き残りを掛けて必死に努力をしています。勝利への第一歩として競合店調査に取り組んでみましょう。
執筆者:株式会社ユーミックプロデュース 渡貫 久
中小企業診断士として、経営全般の相談や中長期経営計画の策定支援を専門分野に経営支援を行う。食料品小売業の経験が長いことから、食品系のマーケティング・販売促進・販路開拓・商品開発が得意分野。2006年から現在まで、公的機関や大学、民間企業において「マーチャンダイジング」「情報化」「ビジネスプラン作成」「商圏分析」「営業管理者研修」等の研修講師を務める。共著に『小売業のための利益改善&能力開発チェックリスト1000』がある。