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ホールフーズマーケット、イータリー、キャスパー、エクイノックスが取り入れたウェルネス

2020年02月14日
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前回は、拡大するウェルネスの概念と消費傾向の変化、コミュニティマーケティングの台頭をお伝えしました。ウェルネスは、欧米小売業を語る上でも欠かせないテーマです。この「心身ともに健康」という概念は、ドラッグストアでは昔から採用されており、薬からのラインロビング(品揃えの総合化)の軸となってきました。しかし、現在では食品小売業やサービス業もウェルネスを取り入れて顧客を魅了しています。

「モノとコト」でウェルネスライフを提案する食品小売業

ウェルネスの概念の中心にあるのは、身体の健康のための医療やセルフメディケーションです。セルフメディケーションの中で重要さを増すのが食品関連。食品小売業では、美味しいもの、身体にいいものを提案してきました。

しかし、消費者の目が厳しい欧米では、本当に身体にいいかを常に見極められ、利益優先で安全性や品質を疎かにすると選ばれなくなるようになりました。そのような社会の小売業では、身体に良いのは当たり前となり、さらに店舗環境やサービスに精神的な健康を取り入れて総合的な健康を提案しています。

 その代表格がアメリカのオーガニックスーパー、Whole Foods Market(ホールフーズマーケット)です。オーガニックな食材という食事療法、自然化粧品などのセルフケアだけでなく、店舗環境づくりにもウェルネスなアプローチをしています。ヘルシーなライフスタイルを表現した市場のような生鮮売場、地産地消の推進、スローライフを感じさせる商品やサービス構成。インテリアを楽しみながら店内を過ごすこともでき、魅力が詰まっています。

そしてアマゾンの傘下となったことでテクノロジーを組み合わせたサービスも注目です。例えば、ニューヨークのブルックリン・ウィリアムズバーグ店では、植物性ミルクのカスタマイズマシーンを設置しています。

アメリカでは、アーモンドやオートミールなどの植物性ミルクの市場が伸びています。元々牛乳の消費が多い国でしたが、乳糖不耐症や牛乳アレルギーという深刻な事情で牛乳を飲めない人たちだけでなく、ヘルシーさと、それまでの味からの改善に気づいた人々からも植物性ミルクが支持を集めています。しかし、植物性ミルクについてもアレルギーを持っている人々はいますので、その種類を見極めることは大事です。

そこで、このカスタマイズマシーンで植物性ミルクの種類と風味を選び、自分流にブレンドできるということは消費者にとって大きなメリットがあるのです。

そして、このカスタマイズマシーンがとてもファッショナブル。シンプルなデザインでありながら、ヘルシーさを連想させるクリアな色合いでできています。このマシーンでミルクをブレンドする時間を楽しむ、これこそがウェルネスな体験とも言えます。
 
このように、深刻なテーマをポジティブな方向に転換する提案は、アメリカからイギリス、そして欧州各地に広がっています。日本だと、環境問題などをテーマとする商品はどこか「難しい」もしくは「胡散臭い」とされてしまいがちですが、欧州では本物の商品を受け入れてもらうための素地作りの工夫が多く見られます。

例えば食品関連の小売業では、「食を知る」という楽しみと結びつけて、「心身ともに健康」を取り組んでいる企業が人気を呼んでいます。

イタリアの食品専門店EATALY(イータリー)は、スローライフに基づいたイタリア食材とイタリア料理をテーマパークのような空間で販売したり、飲食提供を行っています。さらに、カルチャースクールのようなアプローチで啓蒙し、全世界に出店しています。本当に健康に良い「モノ」を、楽しむことができる「コト」とミックスして提案することが小売業にとって大事となるのです。

「休息」を提案する住関連EC、サービス、ファッション業

ウェルネスという概念で大事となるのが休息です。その根幹となるのが睡眠。

睡眠では、アメリカのマットレスEC事業者Casper(キャスパー)がユニークな取り組みを行っています。ニューヨークの流行発信エリアであるソーホーのほど近い場所に仮眠ラウンジ「The Dreamery(ドリーマリー)」をオープンさせています。同店は、25ドルでキャスパーのマットレスを使用したベッドで45分間仮眠でき、飲み物とアメニティ、パジャマも借りられます。店内にはカプセルのようなブースがありカーテンをひいて休むこともできます。営業時間は日中のみ。宿泊することはできず、あくまで疲れを取るための仮眠スペースですが、このような仮眠ラウンジはニューヨークで増加中です。
 
そして本格的な休息ビジネスに参入したのが、アメリカの人気フィットネスジムEquinox(エクイノックス)です。これまでもサラダボウルの人気チェーンSweetgreen(スイートグリーン)と一緒の物件に出店するなど運動と食事療法のトータル提案をしていた同ジムですが、ニューヨークの新スポットであるハドソンヤーズに、2019年5つ星ホテル「Equinox Hotels(エクイノックスホテル)」第1号をオープンさせました。ワークアウト(運動したり、体を鍛えたりすること)と休息を提案するホテルで、塩水の屋内プール、インスタ映えするウッドデッキをしつらえた屋外プール、フィットネス、ヨガ、ピラティス、サイクリングのスタジオを備えており、ワークアウトをライフスタイルの核に捉えていることがうかがえます。

しかし、このホテルの醍醐味は休息をとる客室にあります。ベッドサイドに置かれたタブレットでは部屋の明るさ、音楽、温度や湿度のカスタマイズが可能となっており、睡眠についてのさまざまな工夫がされています。同ホテルは今後全米に展開していく予定です。

このような休息、リラックスムードは、ファッションでもロングトレンドとなっています。素材は天然素材や快適さを追求したリラックス機能素材、シルエットはゆったりとしたものが主流。新ブランドもファッションとスポーツの狭間ゾーンでの開発が進み、GAP(ギャップ)グループが起死回生のために放ったアクティブウエアブランド「HILL CITY(ヒルシティ)」は高い評価を得ています。

まとめ

「ウェルネス」というテーマは業界・業種を超えた大テーマ。一つの店で「ウェルネス」テーマに取り組むには、自社が属する業界や取り扱い商品の中からテーマに合致したものを取り入れるのではなく、まずは生活者視点で「心身ともに健康になるためには」を考えて自社の商品やサービスを見つめ直し、「モノ」を「コト」で包み込むようなアプローチが必要ではないでしょうか。


執筆者: 山中コンサルティングオフィス代表 山中 健
大手百貨店、外資系ブランド、大手経営コンサルタント会社を経て、コンサルタントとして独立。ファッションビジネス、百貨店、SC(ショッピングセンター)業界などにおいて、マーケティングやMD、リテールのコンサルティングを手掛ける。


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