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【家計調査年報を売場改善に活かす 第3回】食品売場編

2020年07月27日
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第2回は家計調査年報を使って消費動向を読み取り、売場改善に活かしていく方法について生鮮売場に関わる品目に絞って解説しました。今回は、一般加工食品の売場に関わる「調味料類」「菓子類」「飲料・酒類」「穀類」について、家計調査年報からわかる消費動向と売場づくりへの活かし方について解説していきます。

家計調査年報の調べ方

家計調査年報は、1年間の家計調査のまとめの資料となっており、一世帯あたり「どのような商品に」「いくらお金を使っているか」を知ることができます。調べる際には、総務省統計局のホームページから該当するファイルをダウンロードします。

今回も、下記ページ上記載の表番号:2「<品目分類>1世帯当たり年間の品目別支出金額」における「時系列(支出金額)-2011年~2018年」のエクセルデータになります。

e-Stat政府統計の総合窓口|2018年家計調査年報

データ内の表を見るだけでも、2011年から2018年までの各品目分類の支出が増えているか、減っているかを知ることが可能となります。

第2回と同様に、ざっくりとした傾向を調べる方法として、「2018年の支出金額」÷「2011年の支出金額」でパーセント表示をしてみることをおすすめします。100%を越えていれば支出が伸びていますし、100%を下回っていれば支出は減少しています。110%以上の品目を抽出する、80%以下の品目を抽出する、などの基準を決めることで、細かく調べていく品目分類やカテゴリーの当たりをつけることができます。

調味料類の動向

それでは、調味料類の動向から見ていきます。

図1

図1は調味料類の支出金額の主要部分です。2018年の調味料全体は2011年と比較して106%となっていますが、料理の基礎調味料である「食塩」「しょう油」「みそ」「砂糖」「酢」は大幅に減少していることがわかります。これは、単身世帯などが増えて世帯構成人数が減少していること、基礎調味料で料理をする人が減っていることなどが考えられます。基礎調味料の支出が減少している一方で、「ドレッシング」「乾燥スープ」「風味調味料(和風だしやコンソメなど)」「つゆ・たれ」「他の調味料」の支出が増加していますが、どれも「そのまま使える」ことが特徴の品目です。

図2

支出金額の多い品目だけでグラフを作成してみると図2になります。増加はなだらかになっていますが、「他の調味料」だけはもともとの金額が多く伸び率も高くなっています。「他の調味料」にはミートソースや麻婆豆腐の素など、素材と混ぜ合わせたら料理ができる商品なども含まれており、料理が苦手な人でも手軽に料理できることから、これからも支出の伸びが期待できます。

図3

一方、支出が減少している基礎調味料をグラフにした図3を見ると、「酢」の支出だけが大きく改善傾向にあることがわかります。健康志向が高まるなか、それ以外の基礎調味料については「塩分控えめ」「糖分控えめ」のために減らす傾向がありますが、「酢」については使用することが健康につながると考えられ、果実酢など飲用の「酢」が増えたことが影響していると思われます。基礎調味料の品揃えや売り方を検討する必要がありますが、「酢」だけは売場提案などを行うことで売上増も期待できそうです。

菓子類の動向

次に、菓子類の支出金額の動向を見てみます。図4は菓子類の支出金額です。

図4

菓子類全体は108%となっていますが、特に「チョコレート」「チョコレート菓子」「アイスクリーム・シャーベット」が大きく増加しています。一方で「ようかん」「まんじゅう」は大幅に減少しています。

図5

また、支出が減少している「ようかん」「まんじゅう」をグラフにした図5を見ると、2015年~2016年に支出が増加していますが、その後、大幅に減少していることがわかります。「ようかん」については下げ止まりもうかがえますが、今後の推移に注目する必要があります。

図6

一方で支出が増加している品目をグラフにした図6を見ると、「チョコレート菓子」は緩やかに伸びていますが、「チョコレート」「アイスクリーム・シャーベット」が急激に伸び続けていることがわかります。「チョコレート」については、健康志向の商品も多く販売されており、子どもから大人まで幅広く購入していることが影響していると思います。元々の金額が大きいなかで伸び率も大きいので、今後、品揃えや売場のさらなる充実が求められます。

飲料・酒類の動向

さらに、飲料・酒類の支出金額の動向を見てみます。図7は飲料・酒類の支出金額の一部です。

図7

飲料全体は111%となっていますが、特に「茶飲料」「コーヒー飲料」「炭酸飲料」「乳飲料」「ウイスキー」「ワイン」が大きく増加しています。なお、「茶飲料」「コーヒー飲料」は缶やペットボトルなどが中心です。これらの品目が増加する一方、「緑茶」「紅茶」「果実・野菜ジュース」「清酒」「焼酎」「ビール」は大きく減少しています。

図8

また、支出が減少している品目をグラフにした図8を見ると、ビールの支出が継続して大きく減少していることがわかります。

図9

一方で支出が増加している品目をグラフにした図9を見ると、「茶飲料」「コーヒー飲料」「炭酸飲料」の伸びが大きいことがわかります。コーヒー飲料が2017年に減少したのは、同年6月ころに「カフェイン中毒問題」の報道があった影響が考えられます。これは、コーヒーとは直接の関係がなかったこともあり、翌年には回復しています。2017年にはワインの支出も減少していますが、2017年にはヨーロッパの主要ワイン生産国が天候不順だったため、ワイン生産量が大幅に減少したことが影響していると思われます。

飲料・酒類については増加や減少が継続していることから、支出金額の傾向に合わせた売場や品揃えの対策が必要になるでしょう。

穀類の動向

最後に、穀類の支出金額の動向を見てみます。図10は穀類の支出金額の一部です。

図10

穀類全体は96%と微減になっていますが、特に「米」「乾うどん・そば」「スパゲティ」「中華麺」「小麦粉」「もち」が大きく減少しています。逆に「パン」はやや増加、「カップ麺」「他の穀類のその他」は大きく増加しています。

図11
図12

金額の大きい「米」「パン」を除き、支出が減少している品目と増加している品目をグラフ化すると図11と図12のようになります。「中華麺」「乾麺」の減少が大きいのに対し、「カップ麺」は大幅に増加しています。「即席麺」の変化は少ないことから、より簡便化志向が高まっていることが推測できます。また、小麦粉が減少しているのに対し、「他の穀類」が増加していることがわかります。「他の穀類のその他」には、「雑穀ブーム」で人気の丸麦、あわ、きびなどが含まれます。今後、多様な穀類の品揃え充実を検討する必要があるでしょう。

まとめ

今回、食品売場カテゴリーの品目について、家計調査年報の支出金額推移を見ながら動向について解説しました。基礎調味料の支出が減少していること、簡便化志向の品目や健康志向の品目についての支出が増加していることなどが読み取れました。これらの支出金額の推移から読み取れる傾向と自店の売上推移などと比較して、差異があるようであれば支出金額の伸びている商品の「品揃えを充実させる」「売場スペースを広くする」「POPやチラシなどで訴求力を高める」など、売場改善に活かすと良いでしょう。ただし、「家計調査年報」を参考にするだけでなく他の動向もキャッチアップすることも大切です。最終回となる次回は、家計調査年報を使ってデイリー売場と惣菜売場に焦点を当てていきます。


執筆者:株式会社ユーミックプロデュース 渡貫 久
中小企業診断士として、経営全般の相談や中長期経営計画の策定支援を専門分野に経営支援を行う。食料品小売業の経験が長いことから、食品系のマーケティング・販売促進・販路開拓・商品開発が得意分野。2006年から現在まで、公的機関や大学、民間企業において「マーチャンダイジング」「情報化」「ビジネスプラン作成」「商圏分析」「営業管理者研修」等の研修講師を務める。共著に『小売業のための利益改善&能力開発チェックリスト1000』がある。

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