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【家計調査年報を売場改善に活かす 第2回】生鮮売場編

2020年07月17日
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前回は家計調査年報を使って消費動向を読み取り、売場改善に活かしていく方法について解説しました。今回は具体的な調べ方や活用方法として、生鮮売場に関わる「魚介類」「肉類」「野菜・果実類」を例に挙げ、家計調査年報からわかるそれらの消費動向と売場づくりについて解説していきます。

家計調査年報の調べ方

家計調査年報は、1年間の家計調査のまとめの資料となっており、一世帯あたり「どのような商品に」「いくらお金を使っているか」を知ることができます。調べる際には、総務省統計局のホームページから該当するファイルをダウンロードします。

今回は、下記ページ上記載の表番号:2「<品目分類>1世帯当たり年間の品目別支出金額」における「時系列(支出金額)-2011年~2018年」のエクセルデータになります

e-Stat政府統計の総合窓口|2018年家計調査年報

データ内の表を見るだけでも、2011年から2018年までの各品目分類の支出が増えているか、減っているかを知ることが可能です。

まず、ざっくりとした傾向を調べる方法として、「2018年の支出金額」÷「2011年の支出金額」でパーセント表示をしてみることをおすすめします。100%を越えていれば支出が伸びていますし、100%を下回っていれば支出は減少しています。110%以上の品目を抽出する、80%以下の品目を抽出する、などの基準を決めることで、細かく調べていく品目分類やカテゴリーの当たりをつけることができます。

魚介類の動向

それでは、魚介類の動向から見ていきます。次の図1は魚介類の支出金額の一部です。

図1

2018年の鮮魚全体は2011年と比較して89%となっていますが、「あじ」「かれい」「さんま」「たい」はそれよりも支出が減っていることがわかります。一方で「さけ」は112%と支出が増えていることが見てとれます。

図2

支出が減少している品目の中でも、品目全体の中から目立つものを集めてグラフを作成してみると図2のようになります。全体的に減少傾向ですが、「たい」「あじ」については、ほぼ同じ動きをしていることから、単なる支出減少というよりも相場の影響を受けている可能性があります。「さんま」については、2017年が大幅に減少していますが、2017年は未曽有の不漁だったことが影響していると思われます。「ぶり」「いか」「かれい」については継続して減少しているので、消費そのものが減少している可能性が考えられるでしょう。

図3

一方で、支出が増えているものを集めてグラフにしたのが図3です。「さけ」については漁獲量や相場の影響はあるものの総じて増加傾向であることがわかります。一方、塩干魚介(干物)のカテゴリにある「塩サケ」は2011年と比較して支出は増えているものの2015年以降はやや減少傾向となっています。

魚介類については、若年層を中心に調理が苦手な人が増えているので、今後も減少傾向が続くことが予想されますが、ほとんど調理の必要が無い状態で販売され、若年層の嗜好にも合う「サケ」は今後も支出金額の増加が期待できると考えられます。また、魚介の缶詰については2018年に大幅に増加していますが、日本缶詰びん詰レトルト食品協会の調べによると、これは健康効果で大人気となった「さば」の缶詰の増加が大きな要因となっているようです。

参考:食品産業新聞社ニュースWEB|さば缶人気がけん引、缶詰の生産量が4年ぶり増加/2018年缶詰びん詰レトルト食品生産統計
https://www.ssnp.co.jp/news/frozen/2019/06/2019-0619-1506-14.html

これら、「さけ」「塩さけ」「魚介の缶詰」などは、元々の金額が大きく、支出が伸びていることから、品揃えの拡大を検討するなどの対応を行うと良いでしょう。反対に、支出が減少している品目については、相場や漁獲量の推移を見ながら品揃えや発注量を調整するなどの対応を検討してみましょう。

肉類の動向

次は、肉類に関する支出金額の動向を見ていきます。

図4

図4は肉類の生鮮肉と加工肉の支出金額です。生鮮肉全体で20%伸びており、「牛肉」で117%、それ以外の「豚肉」「鶏肉」「合いびき肉」「他の生鮮肉」が120%以上となっています。加工肉は全体で100%となっていますが、「ハム」だけは86%と減少していることがわかります。

図5

支出金額の多い「牛肉」「豚肉」「鶏肉」だけでグラフを作成してみると図5の通りになります。支出の増加はなだらかになっていますが、「牛肉」「豚肉」「鶏肉」いずれも同様の傾向で推移しています。魚介類と比較しても調理が簡単で、食の洋風化にもマッチした肉類は、今後も安定した増加が期待できると思われます。

図6

一方で、支出が減少している「ハム」は、減少幅が大きいことから、今後の推移が懸念されます。「ハム」については、商品を売れ筋に絞り込むなど売り方を検討する必要もあるでしょう。

野菜・果実類の動向

最後に野菜・果実類の支出金額の動向を見てみます。

図7

図7は野菜・果物の中でも支出が大きく増加、もしくは減少した品目をピックアップしたものです。生鮮野菜全体で10%、生鮮果物で2%伸びています。野菜については「キャベツ」「はくさい」「ブロッコリー」「トマト」「ピーマン」、果物については「ぶどう」「キウイフルーツ」「果物加工品」が120%以上となっています。

図8

見やすくするため支出金額の多い「トマト」を除き、支出金額の多い品目だけでグラフを作成してみると図8になります。品目別で、増加にバラつきがあることがわかります。順調に支出が拡大している「キャベツ」「はくさい」「ブロッコリー」「ピーマン」「キウイフルーツ」「果物加工品」に対して、「ぶどう」については年度による変化が大きいことから、相場や収穫量が影響していると考えられます。

また、増加している品目の中でも「キウイフルーツ」「果物加工品」について急増していることがわかります。「キウイフルーツ」は、近年、栄養成分の豊富さが話題となっていること、また、輸入業者が売場で積極的なプロモーションを行っていることが影響していると考えられます。「果物加工品」は、簡便化志向の高まりによる「カットフルーツ」の拡大、健康ブームにより売場での品揃えが充実してきている「ドライフルーツ」の拡大などの要因があると思われます。

一方で、支出が減少している「じゃがいも」「グレープフルーツ」「メロン」をグラフ化した図9を見てみると、「じゃがいも」の支出が不安定に推移していることがわかります。これは相場の影響が大きいと考えられ、2018年は支出金額が減少していることから、2019年以降は支出金額の増加が予測できます。「メロン」「グレープフルーツ」については、年度ごとに多少の変動はあるものの減少を続けており、消費そのものが減少している可能性が考えられます。

特にグレープフルーツの減少は顕著です。新しい果物が登場し、甘い果物が好まれる傾向にあるなか、酸味の強いグレープフルーツはさらなる減少も予測されます。これをふまえ、総務省では「消費支出に占める構成比が継続的に低くなっている」ことを理由に、2020年の家計調査からグレープフルーツを「他の柑きつ類」に統合する方針です

ほかの生鮮食品と比較しても、青果物は相場の影響が強いカテゴリーなので、相場の値動きと合わせて、支出金額の増減に合わせた品揃えの見直し、売場スペースの見直しに取り組むと良いでしょう。

まとめ

今回、生鮮カテゴリーの品目について、家計調査年報の支出金額推移を見ながら動向について解説しました。これらの支出金額の推移から読み取れる傾向と自店の売上推移などと比較して、差異があるようであれば支出金額の伸びている商品の「品揃えを充実させる」「売場スペースを広くする」「POPやチラシなどで訴求力を高める」など、売場改善に活かすと良いでしょう。次回は、家計調査年報を使って食品売場に焦点を当てていきます。


執筆者:株式会社ユーミックプロデュース 渡貫 久
中小企業診断士として、経営全般の相談や中長期経営計画の策定支援を専門分野に経営支援を行う。食料品小売業の経験が長いことから、食品系のマーケティング・販売促進・販路開拓・商品開発が得意分野。2006年から現在まで、公的機関や大学、民間企業において「マーチャンダイジング」「情報化」「ビジネスプラン作成」「商圏分析」「営業管理者研修」等の研修講師を務める。共著に『小売業のための利益改善&能力開発チェックリスト1000』がある。

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