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小売店の商圏調査ではオフィスワーカーを知ることも重要!「経済センサス」を活用して店舗運営に活かそう
小売店を営業する際には、売上の源泉となるお客様のボリュームを把握することが不可欠です。そのため、商圏(=お客様が来店する範囲)調査を行い、店舗周辺の居住者がどの程度存在しているのかを調べます。しかし、お客様は店舗周辺に住んでいる人だけではないことがあるため、それだけでは不十分な場合もあります。そのようなとき、商圏をより詳しく調べる方法である「経済センサス」と、その活用方法を紹介します。
立地によっては昼夜で人の数が大きく変わる
小売店を営業する際には、当然ながら店舗周辺にお客様候補となる人が多く存在しているかどうかが重要になります。そのため、最初に足元商圏の調査を行います。その際、店舗周辺の居住者だけではなく、店舗周辺の事業所に勤めている人もお客様になる可能性があります。
特にオフィスが多い立地であれば、「昼間にその場所で働いている人は多いが、実際にその場所に住んでいる人は少ない」など、昼間と夜間とでその場所に存在している人の数は大きく変動します。
サラリーマンやOL向けに、弁当が売れているスーパー、お昼専門の弁当屋、オフィス立地のドラッグストアなど、オフィスワーカーが中心顧客になっている店舗は、居住者数を知るだけでは不十分です。その地域でどれだけの事業所が立地しているのか、また、どれだけの人が働いているのかも含めて知る必要があります。
経済センサスとは?
経済センサスとは、日本国内全ての事業所及び企業を対象として、事業の種類や事業内容、従業者数、売上などを調査した、総務省統計局が公開している統計資料になります。経済センサスには「基礎調査」と「活動調査」があり、事業者の名称や所在地などの基礎情報を集めた「基礎調査」と、売上高などの経済活動を集めた「活動調査」が5年ごとに実施されます。
現在(2020年3月12日時点)、「基礎調査」は平成26年7月に調査されたものが公開されています。基礎調査では47都道県の市区町村の町丁目別に農林漁業、製造業、小売業、サービス業などの業種について、それぞれをさらに細分化した業種ごとに「事業所数」「従業者数」が掲載されています。
また、「活動調査」については平成28年6月に調査されたものが公開されています。47都道府県の市区町村ごとに、従業員数の区分ごとの事業所の数(1人~4人が何事業所あるのかなど)、売上高、売り場面積などが集計、記載されています。
より店舗の足元の細かい事業所数や従業者数を知りたい場合は「基礎調査」を活用すると良いでしょう。
経済センサスの活用方法
経済センサスの「基礎調査」活用にあたり、店舗周辺にある事業所の数と働いている人の数を調べる方法をご紹介します。まず、下記ホームページを参照してください。
e-Stat 政府統計の総合窓口|経済センサス|平成26年経済センサス‐基礎調査
このページは平成26年経済センサス基礎調査の町丁・大字別集計です。ここに記載されている、調べたい都道府県の統計表を選んでCSVダウンロードをすると、選んだ都道府県の市区町村別町丁目別の事業所数、従業者数を知ることができます。
統計表は「 (1) 総数 ~ 61 無店舗小売業」「(2) J 金融業,保険業 ~ 出向・派遣従業者のみ」の2つに分かれています。(2)については「金融業,保険業」「宿泊,飲食サービス業」「医療,福祉」「公務員」などが含まれ、それ以外の大半の「製造業」「小売業」などの多くの業種については(1)に含まれます。
例えば、都道府県「青森県」の「 (1) 総数 ~ 61 無店舗小売業」のCSVファイルをダウンロードして整理すると下記の表1になります。
例えば、町丁・大字3段目の「青森市八重田1丁目」には9事業所あり、244人が働いていることがわかります。内訳は男性126人、女性118人です。事業所数は少ないですが、従業者数は比較的多く、男女の偏りが少ないことがわかります。
さらに、詳しい業種を調べてみたのが下記の表2です。
244人の従業者のうち、129人が製造業で、その全てが1社の食品製造業に従事していることがわかります。
もし、当社が運営する店舗が食品スーパーマーケットだとすれば、この食品製造業が店舗の近くにあり、この食品製造業に社員食堂などが無ければ、昼食のニーズを取り込むことができる可能性があるでしょう。
「青森市八重田1丁目」にある9事業所の内訳を調べるために、「(2) J 金融業,保険業 ~ 出向・派遣従業者のみ」のCSVファイルをダウンロードし、事業所の存在する業種だけを抽出したのが下記の表3です。
表2で表した食料品製造業1事業所129人のほか、水道業3事業所70人、食品小売業1事業所10人、その他小売業1事業所25人、理美容業1事業所2人、サービス業1事業所1人、医療業1事業所7人となり、合計で9事業所244人になります。
これを円グラフで表したのが図4です。
この地域で働いている従業者の多くを占めており、食品販売以外の業種である「食料品製造業」「水道業」「医療業」の従業者206人は、取り組み方次第では、食品スーパーマーケットである当社のお弁当を購入するお客様になるかもしれません。
ぜひ、皆様の店舗所在地で調べてみてはいかがでしょうか?
まとめ
普段、目にすることのない経済センサスですが、日本全体の事業所の動向を知ることができるのはもちろん、自店の足元の事業所の動向を知ることができる、小売業者にとって有益な資料と言えます。サラリーマンやOLなど、オフィスワーカーをターゲットとしている店舗では特に有効なので、商圏調査やマーケティングの一環としてご活用ください。
執筆者:株式会社ユーミックプロデュース 渡貫 久
中小企業診断士として、経営全般の相談や中長期経営計画の策定支援を専門分野に経営支援を行う。食料品小売業の経験が長いことから、食品系のマーケティング・販売促進・販路開拓・商品開発が得意分野。2006年から現在まで、公的機関や大学、民間企業において「マーチャンダイジング」「情報化」「ビジネスプラン作成」「商圏分析」「営業管理者研修」等の研修講師を務める。共著に『小売業のための利益改善&能力開発チェックリスト1000』がある。