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【第3回】競合店調査の実践的知識~競合店調査で調べる必須項目~店内編
第2回「競合店調査で調べる必須項目~店外編」 では、「店外」の調査方法を紹介しました。今回は「店内」の調査方法を紹介します。
競合店調査を行う際、店外から見た調査の次に店内の調査を行います。店外を見ただけでもいろいろなことを知ることはできますが、店内を見ることで品揃えやサービスなど、より具体的な競合店の様子を知ることが可能となります。
また、店内の様子は短期間で変化することから、継続して競合店調査を行う際には店内の調査だけを行う場合が多いのも特徴です。それだけ店内の調査は重要で、自店の改善活動を行うときに有効な手法になると言えるでしょう。それでは、店内の競合店調査で重要なポイントを見ていきましょう。
店舗全体から見る視点
店内を調査する場合、商品や売場づくりから見てしまいがちですが、まずは店舗全体から見ていきましょう。店舗全体から見る視点としては「売場面積の広さ」「売場レイアウト」「部門別の売場の広さ」といった売場全体のイメージや、「レジ台数」「カゴやカートの数」「通路幅の広さ」「客動線(お客様が店内を巡る経路)」「従業員動線(従業員が店内を歩く経路)」などの利便性の高さ、「来店客数」「客層」「客単価」「買上点数」といったお客様の様子などがあります。
売場面積の広さや売り場レイアウトは売場の魅力に直結しますし、部門別の売場の広さは店舗が力を入れている重点部門が明確になります。例えば、広い面積を青果売場に配分している店舗は「青果に力を入れている店舗」と推測することができます。
レジ台数、カゴ、カートの数は来店客数に直結しますし、通路幅の広さは買い物のしやすさ、客動線や従業員動線は売場配置の効率性などを知ることが可能になります。
来店客数や客層を知ると、競合店を利用しているお客様の状況を知ることができます。実際に来店客数を数えるなどの方法で調べますが、時間帯で異なるので、時間を変えて複数回調査する必要があります。
客単価や買上点数については、レジで精算しているお客様が「いくら購入しているか」「商品を何個購入しているか」を調べます。購入数が極端に多かったり少なかったりしないお客様を10人程度ピックアップして、おおよそで把握すると良いでしょう。
部門別の売場を見る視点
店舗全体を見た後は、部門別の売場を見ていきます。部門別で見る視点としては「カテゴリー別の売場の広さ(例:鮮魚売場の中の刺身カテゴリーの広さ)」「品揃えの豊富さ」「プライスラインやプライスゾーン」「売り込み商品や主力商品」といった部門全体のイメージ、「主力商品の価格」「こだわり商品、季節商品、地域商品の品揃え」「商品の加工レベル」といった品揃えの状況、「売場で発信している情報」「衛生管理状況」などの付帯情報があります。
カテゴリー別の売場の広さを見れば、部門の重点カテゴリーが明確になります。例えば、鮮魚売場の中で、刺身カテゴリーのスペースが多くを占めていれば重点カテゴリーだと推測できます。品揃えの豊富さは部門全体の魅力に直結します。
プライスラインは価格の種類(98円、198円、298円など)、プライスゾーンは価格の幅(98円~298円など)のことで、部門の価格帯や値付けの状況が明確になります。売り込み商品や主力商品は売場で多くのスペースを使い、販促物などを使って売り込みを図っている商品ということであり、その売場の看板商品にあたります。これらの情報を整理することで、その部門全体のイメージを明確にすることができます。
主力商品の価格を把握すれば、自店でも価格面での対策を講じることができ、こだわり商品や季節商品、地域商品の品揃えの状況を見れば、その店のプッシュしたい商品に対する取り組み具合を推測することが可能となります。
商品の加工レベルは、例えば刺身や肉の厚さや並べ方、トレーの使い方、見栄えの良さなどになりますが、お客様から見た商品の魅力に繋がります。
売場で発信している情報としては、商品や産地の情報、加工に関する情報など、売場のこだわりに関する情報があります。衛生管理状況としては、売場の冷蔵ケースにある温度チェック表がキチンと管理されているか、冷蔵ケースの制限ポイントを越えて陳列していないか、売場の清掃は行き届いているか、異臭はしないかのほか、売場から覗いて見えるバックルームの清掃はできているか、従業員の制服は衛生的かなどです。
商品カテゴリーの見分け方
先ほどお話しした売り込み商品、主力商品、こだわり商品、季節商品、地域商品のカテゴリー分けでは、ひとつの商品が複数にまたがっていることがあります。例えば、夏のスイカであれば、夏の季節商品かつ主力商品であり、さらに売り込み商品でもあり、販売場所がスイカの産地ならば地域商品にもなり、特別なブランドスイカならこだわり商品にもなり得ます。しかし、多くの場合はどれかの特徴が強く表れているはずです。
そのひとつの見極め方は、どの売場に置かれているかとPOPなどの販促物になります。売場の中でも目立つ場所にあり、スペースを広く取っているものは主力商品、低価格でボリューム感を出して販売しているものは売り込み商品、地域商品やこだわり商品の場合は類似した商品同士でコーナー化して展開している場合が多いでしょう。また、POPは「お買得感」や「地域性」など、それぞれの商品の特徴を訴求している場合が多くなります。
売り込み商品…店側が意図的に売りたい商品
主力商品…売上の上位を構成する商品
こだわり商品…他店との差別化を意識した商品
季節商品…季節感を訴求する商品
地域商品…その地域で販売される固有の商品
販売促進、サービスの視点
店舗内の調査を行う際、売場や商品に目を奪われて、ついつい忘れがちになりますが、集客やリピートに影響する販売促進やサービスは忘れてはならない項目です。
「POP」「チラシ」「会員カード」「ポイント活用」「店内放送」「イベント」のような販売促進に関する取り組み、「接客レベル」「配達サービス」「高齢者や障碍者への配慮」「トイレの管理(女性客の評価に大きく影響)」「地域への貢献活動」などサービス面での取り組みは、店舗ごとに取り組みのスタンスが異なります。
POPやチラシについては、その内容やパターンなどを詳しく調べることで、販売促進活動が明確になります。曜日の違い、商品の違い、提案内容、価格など、一覧表を作成して整理し、自店と比較してみるのも良いでしょう。
サービス面については、サービスの有無はもちろん、取り組みの程度の強弱、取り組みを積極的に宣伝しているかなどの視点でも調査するのも参考になります。配達サービスについては、実際にどの程度のお客様が利用されているのかを調べてみましょう。
競合店調査「店内編」のまとめ
競合店調査を行う方法として、今回は「店内編」を紹介しました。
まず、店舗全体から見る視点では「お客様の様子」「店舗の利便性」「重点部門」の把握が重要になります。次に、部門別の売場を見る視点では「部門全体のイメージ」「品揃えの状況」「部門のこだわりや衛生管理の状況」を把握していきます。最後に、販売促進、サービスの視点では「店舗独自の工夫」「店舗運営上のポリシー」「ターゲットとしている顧客」などを把握していきます。
これらの調査に取り組むことで、競合店の「商品面やサービス面での取り組みや特徴」が明確となり、店外の調査結果と組み合わせることで、地域における競合店のポジションが明確になっていきます。自店と比較することで「強化する部門やカテゴリーの見直し」「競合店向けの品揃え対策」「価格設定の見直し」「販売促進やサービス内容の見直し」など、具体的な競合店対策を検討することが可能です。次のチェックリストを活用し、競合店調査に取り組んでみましょう。
執筆者:株式会社ユーミックプロデュース 渡貫 久
中小企業診断士として、経営全般の相談や中長期経営計画の策定支援を専門分野に経営支援を行う。食料品小売業の経験が長いことから、食品系のマーケティング・販売促進・販路開拓・商品開発が得意分野。2006年から現在まで、公的機関や大学、民間企業において「マーチャンダイジング」「情報化」「ビジネスプラン作成」「商圏分析」「営業管理者研修」等の研修講師を務める。共著に『小売業のための利益改善&能力開発チェックリスト1000』がある。