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台風・大雨時の情報収集の方法と店舗と命を守る水害対策【災害対策シリーズ・第10回】

2020年12月25日
※掲載内容は公開日時点の情報です。現在と異なる場合がございます。
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執筆者:ソナエルワークス代表 
    高荷智也(備え・防災・BCP策定アドバイザー)

「自分と家族が死なないための防災対策」と「企業の実践的BCP策定」のポイントをロジック解説するフリーの専門家。大地震や感染症パンデミックなどの防災から、銃火器を使わないゾンビ対策まで、堅い防災を分かりやすく伝えるアドバイスに定評があり、講演・執筆・コンサルティング・メディア出演など実績多数。著書に『中小企業のためのBCP策定パーフェクトガイド』など。1982年、静岡県生まれ。

有事のときに本当に“いいお店”かどうかが分かる。お客様、スタッフ、そして店舗を守るための災害対策シリーズ、第10回は「水害時の情報収集と水害対策」。水害時の対策に必要な情報収集の方法と、店舗と命を守るための確認ポイントを紹介します。


避難情報と気象警報の収集と判断

第9回」ではハザードマップを用いた、水害に対する自店舗の影響を調べる方法について紹介をしました。危険性が高い地域である場合はもちろん、比較的低い地域の場合もスタッフが通勤できなくなったりお客様の来店が困難になる可能性もあるため、水害に関する情報収集を行うことは必要です。この項目では、情報収集のポイントについて解説します。

数日先~前日の情報収集

日頃からニュース報道や各種アプリを用いた情報収集を行うことが重要です。自店舗のある地域に対して、台風の通過や大雨の可能性に関する情報を入手した際には、気象庁の「早期注意情報(警報級の可能性)」ページを、パソコンもしくはスマートフォンで確認してください。

図:早期注意情報(警報級の可能性)

<出典元>
気象庁|早期注意情報(警報級の可能性)
https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/bosai/prob_warning.html

「早期注意情報」サイトにアクセスし、自店舗が立地する自治体のページを開くと、5日先までの「気象警報」の可能性を確認することができます。「いつ・どこに・どんな」被害をもたらす災害が発生するかを細かく確認できますので、大きな被害を受けそうな場合は、早めに休業の判断やスタッフへの出退勤指示、または各種の資機材・在庫の移動準備などを行うことができます。
なお店舗が都市部にある場合は、鉄道会社などが発表する計画運休の情報も参考にしてください。「鉄道が運休するほどの台風」接近時に、通常どおりの店舗営業を行うのはリスクが高いです。またスタッフの多くが電車通勤などをしている場合は、そもそも出勤することができない可能性がありますので、早めに休業や短縮営業の判断が必要になるでしょう。

数時間先~リアルタイムの情報収集

災害発生の可能性が高まってくると、自治体からは「避難情報(避難準備情報・避難勧告・避難指示)」が、気象庁からは「防災気象情報(注意報・警報・特別警報など)」が発表されはじめます。こうした情報は前述の「早期注意情報」ページの他、各種ニュースサイトの天気コーナーなどでも確認できます。

自治体から避難情報が発表された場合、例えば「○○市全域、○○万人に避難指示」などの情報が出されます。しかし浸水害・土砂災害は、地形によって生じる場所が定まってきますので、「○○市全域」が本当に危険な場合と、一部のエリアに限定される場合があります。このような状況で役立つのが、気象庁の「危険度分布」情報ページです。

1)大雨警報(土砂災害)の危険度分布
https://www.jma.go.jp/jp/doshamesh/

2)大雨警報(浸水害)の危険度分布
https://www.jma.go.jp/jp/suigaimesh/inund.html

3)洪水警報の危険度分布
https://www.jma.go.jp/jp/suigaimesh/flood.html

図:洪水警報の危険度分布


<出典元>
気象庁|早期注意情報(警報級の可能性)https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/bosai/prob_warning.html
※図は2019年の「令和元年東日本台風(台風19号)」時の「洪水警報の危険度分布」

これは関東全体を表示させていますが、店舗で確認をする際には地図を拡大して自地域の危険度を確認することができます。「現在から1時間先」までの、土砂災害・浸水の危険度を、細かいエリア単位で確認することができます。自店舗を含む地域が「警戒レベル4」になりそうな場合は、在庫・資機材の移動、止水板や土のう設置などが完了していることを確認しましょう。
その場に留まると命に危険が生じそうな場合は、早めに安全な場所へ移動しましょう。

店舗を守る防災対策

自店舗が土砂災害に飲み込まれる可能性のある地域にある場合や、天井高まで浸水することが想定できる地域にある場合は、被害を前提とした在庫の持ち方、あるいは保険への加入などが必要です。 一方、軽微な浸水の想定となっている地域は、次のような浸水対策を検討・準備を心がけましょう。

  • 土のう・止水板・防水シートなどを設置して、水の浸入を防ぐ準備
  • 店舗内の排水溝やトイレなどを全て封鎖して、水の逆流を防ぐ準備
  • 商品や各種の資機材を、浸水しない場所へ移動させるための準備
  • 浸水後に片付けを行うための、個人装備やバケツ・消毒剤などの備蓄
  • ライフラインの停止に備えた、停電・断水対策

浸水や土砂災害は地形に依存する災害です。リスクがある地域は、被害を想定した対策を行い続けることが必要です。もし店舗の移転を行うような機会がある場合は、予め浸水や土砂災害が生じる可能性が低い地域に立地することをぜひ検討してください。

命を守る避難計画

店舗が以下のエリアに立地する場合は、その場に留まると命に関わる場合があります。情報収集の結果、その場に留まると命に危険が生じる可能性があると判断される場合は、避難場所などへの「立退き避難」を行いましょう。

  • 「土砂災害警戒区危機」「土砂災害特別警戒区域」
  • 「家屋倒壊等氾濫想定区域(河川浸食・氾濫流)」
  • 「想定浸水深が最上階の床高を上回る」場所

もちろん理想としては、スタッフおよび顧客の安全を守るために、事前に休業や短縮営業への切り替えの判断が最良です。しかし想定より大きな被害となった場合や、休業や短縮営業の判断が間に合わなかった場合は、直ちに安全な場所へ移動しましょう。

避難する場所について

避難先には、「避難場所(正式には指定緊急避難場所)」と「避難所(正式には指定避難所)」の2種類があります。
「避難場所」は「命を守るために逃げ込む場所」です。例えば、津波であれば高台または津波避難ビルや津波避難タワーが避難場所となります。一方、「避難所」は「生活ができなくなった人が一時的に身を寄せる場所」です。例えば地震発生後、その場に残ると二次災害発生の恐れがある場合に一次的に避難する公立学校の体育館が避難所です。
「避難場所」は、災害種別(津波、高潮、洪水、内水氾濫、崖崩れ・土石流・地滑り、大規模な火事、地震、火山)ごとに指定されていますので、ハザードマップで最寄りの「避難場所」がどこにあるかを調べ、自店舗に対する影響だけでなく、避難先についても確認するようにしてください。「第7回」でハザードマップの種類を紹介してますので、どのような場合にどのハザードマップを用いて避難計画を立てる必要があるかをぜひチェックしてください。

避難場所のマーク、災害が発生した時はまずはここに避難。
避難所のマーク、被災して生活ができなくなった場合はこちらへ避難。

図:避難場所等の図記号1

避難場所の図記号には、どの災害に対応しているか記されています。

図:避難場所等の図記号2

<出典元>(図記号1・図記号2)
内閣府|避難場所等の図記号の標準化の取組 : 防災情報のページ
   http://www.bousai.go.jp/kyoiku/zukigo/pdf/symbol_01.pdf

まとめ

日本は気象観測網が整備されているため、災害に発展する恐れのある気象現象が発生する際、ほとんどの場合に警告が出ます。この情報を無視して被害を招くか、または被害を回避できるかを決めるのは、行政ではなく店舗の判断ひとつです。お客様はもちろん、店舗スタッフの安全確保をいつでもできる準備をしておきましょう。万一の場合に備えられるお店であることは、お客様とスタッフの信頼に繋がります。自分の店舗を水害から守るのは自分という意識でぜひ対策を行ってください。


【災害対策シリーズ】
第1回 防災だけじゃだめ?店舗に“今こそ”必要なBCP・事業継続計画とは?
第2回 大規模停電、店舗としてできる停電対策は?
第3回 2019年は大地震3回・大規模台風2回。過去を振り返り、店舗を守る対策を学ぶ
第4回 地震対策から保険の見直しまで。2020年に向けて行いたい事前対策とは?
第5回 大地震に備える店舗の対応/前編~転倒・移動・落下・飛散対策には?~
第6回 大地震に備える店舗の対応/後編~二次災害と被害後のためにできること~
第7回 災害からお客様とスタッフの“命を守る”ための準備とは?
第8回 災害からお客様とスタッフの命を守るため、
    救助道具・応急手当・防災備蓄を準備しよう

第9回 台風・大雨被害に備える!ハザードマップで店舗の想定被害を把握しよう
第10回 台風・大雨時の情報収集の方法と店舗と命を守る水害対策

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