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災害からお客様とスタッフの“命を守る”ための準備とは?【災害対策シリーズ・第7回】

2020年03月27日
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有事のときに本当に“いいお店”かどうかが分かる。お客様、スタッフ、そして店舗を守るための災害対策シリーズ、第7回は「災害からお客様とスタッフの命を守る」ための準備を紹介します。

BCPにおける「防災」の考え方

企業や店舗が「事業」を守るために策定するBCP(事業継続計画)ですが、この中身にはいろいろな要素が含まれています。非常時に使う道具や器材の準備、マニュアルの作成、防災訓練の実施、火災保険や地震保険、あるいは火災保険のカバー範囲を広げた店舗総合保険などへの加入、こうしたさまざまな準備をとりまとめてBCPとして整理します。もちろん「防災対策」もBCPを構成する重要な要素のひとつですが、防災がBCPの全てではないということになります(詳細は「第1回」をご覧ください)。

「従業員に被害が出ることを前提」とするのがBCP

BCP策定の目的は「事業(店舗経営)」を守ることですが、「人」という要素に注目してBCPの役割を考えると、「従業員に被害が出たり、出勤できないスタッフが発生したりした場合、営業を継続するにはどんな準備をしておけばよいのか」となります。もう一歩踏み込んで考えると、「従業員に被害が出たり、出勤できないスタッフが発生したりすることを前提に事前対策を考える」のがBCP策定のポイントです。

BCP策定の前提として「全員の命を守る」防災対策を行う

事業継続がBCPの主目的となりますが、だからといって事業の継続が人命よりも優先されるということにはなりません。BCPを策定する際には、まず前提条件として「全てのお客様・スタッフの生命を守る防災対策」を実施し、そのうえで「営業を継続するための防災対策」を優先順位に従って実施することになります。具体的な対策について考えていきましょう。

事前対策の準備が生死を決める「地震対策」

大地震は、事前対策の有無がそのままスタッフやお客様の生死に直結する恐れがあるため、まずは「命を守る地震対策」が不可欠です。この詳細については「第5回」「第6回」のコラムをご覧いただきたいと思いますが、改めて重要なポイントを優先順に復習すると次の通りです。

  1. 建物の倒壊を防ぐための準備(耐震診断・耐震補強・店舗移転)
  2. 店舗内の安全を確保するための準備(転倒・落下・衝突・飛散対策)
  3. 火災に対応する準備(通報・初期消火の準備)

大地震の予知はできませんので、上記の対策は事前に完了させておかなければなりません。建物の耐震化や什器の固定などは費用と時間がかかるため、いきなり全ての項目を完了させるのではなく、少しずつ実施をすることになります。什器の固定を行う場合などは、特に背が高く・重たく・不安定なもの、また転倒時に避難経路をふさぐもの、などから優先的に実施します。

「逃げないと命が危ない」災害からの避難計画

地震対策とあわせて行う「命を守る対策」は、避難の準備です。津波や浸水など「巻き込まれると命に危険が生じる災害」が発生する地域に店舗が存在する場合は、スタッフとお客様をすばやく避難させる準備をしておかなければなりません。このとき「お客様の避難や安全確保について店舗がどこまで責任を持つべきか」という悩みも生じますが、「お客様を置いてスタッフが避難することはできないため、スタッフを守るためにまずお客様を逃がすのだ」と考えてもよいでしょう。

逃げるべき場所をハザードマップで確認する

「第4回」でも紹介していますが、まず行うのはハザードマップの確認です。以下の2サイト、またはWEB検索などを行い、店舗が存在する自治体周辺の地図を確認してください。

「重ねるハザードマップ」(国土交通省のハザードマップページ)
https://disaportal.gsi.go.jp/maps/

「わがまちハザードマップ」(市町村のハザードマップポータルサイト)
https://disaportal.gsi.go.jp/hazardmap/

確認するハザードマップと、読み取るべき項目は以下の通りです。店舗がハザードマップ上の以下の地域に存在する場合、そのまま店内に留まると命を落とす危険があります。災害発生時に「避難場所」へ移動するための準備が必要です。

種類

避難計画が必要な場合
津波ハザードマップ ・店舗(または店舗が入居するフロア)が、わずかでも津波の浸水域にある
浸水(洪水)ハザードマップ

・店舗(または店舗が入居するフロア)が、床上浸水する地域にある

・店舗の建物が「家屋倒壊等氾濫想定区域」にある

土砂災害ハザードマップ ・店舗の建物が「土砂災害警戒区域」「土砂災害特別警戒区域」にある
地震火災ハザードマップ
・店舗の建物が「危険度4」「危険度5」の地域にある

※ハザードマップとして整備されているのは東京都の「東京危険度マップ」のみ

噴火ハザードマップ  ・店舗の建物が噴火の直接的な影響(噴石・溶岩流・火砕流・土石流など)を受ける地域にある

避難計画を立てる

命を守るための避難場所は災害の種類によって異なります。津波であれば高台または津波避難ビルや津波避難タワー。浸水害も同様に高台やビルの上層階。火災であれば河川敷や運動場などの広い場所、といった具合です。「避難場所(正式には指定緊急避難場所)」は災害の種類ごとに異なるため、ハザードマップを見て「この災害が発生した場合はここに逃げる」という情報を確認してください。

なお、避難先にはもうひとつの種類として「避難所(正式には指定避難所)」があります。命を守るために逃げ込む避難場所と異なり、避難所は「生活ができなくなった人が一時的に身を寄せる場所」で、最寄りの公立学校の体育館などが指定されます。いわゆる災害時にテレビなどで見かけるのが、この避難所です。店舗が作成する避難計画では、命を守るための「避難場所」への移動が対象となります。場所がどこなのか、どのルートで移動するのか、避難時の店内チェック(逃げ遅れ確認)や、施錠・貴重品の持出などをどういう順序で誰が行うのか、などを定めておくとよいでしょう。

まとめ

地震対策も避難計画も、災害が発生してから準備していては間に合いません。当コラムのテーマである「有事のときに本当に“いいお店”かどうかが分かる」は、有事の前にほとんど決まってしまうのです。まずは今すぐ、ハザードマップの確認から行ってみてください。次回は、今回の続きとしてモノの準備をはじめとする物理対策を紹介します。


執筆者:ソナエルワークス代表 
    高荷智也(備え・防災・BCP策定アドバイザー)
「自分と家族が死なないための防災対策」と「企業の実践的BCP策定」のポイントをロジック解説するフリーの専門家。大地震や感染症パンデミックなどの防災から、銃火器を使わないゾンビ対策まで、堅い防災を分かりやすく伝えるアドバイスに定評があり、講演・執筆・コンサルティング・メディア出演など実績多数。著書に『中小企業のためのBCP策定パーフェクトガイド』など。1982年、静岡県生まれ。

【災害対策シリーズ】
第1回 防災だけじゃだめ?店舗に“今こそ”必要なBCP・事業継続計画とは?
第2回 大規模停電、店舗としてできる停電対策は?
第3回 2019年は大地震3回・大規模台風2回。過去を振り返り、店舗を守る対策を学ぶ
第4回 地震対策から保険の見直しまで。2020年に向けて行いたい事前対策とは?
第5回 大地震に備える店舗の対応/前編~転倒・移動・落下・飛散対策には?~
第6回 大地震に備える店舗の対応/後編~二次災害と被害後のためにできること~

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