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大地震に備える店舗の対応/前編~転倒・移動・落下・飛散対策には?~【災害対策シリーズ・第5回】

2020年03月25日
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有事のときに本当に“いいお店”かどうかが分かる。お客様、スタッフ、そして店舗を守るための災害対策シリーズ、第5回は地震大国日本では欠かせない大地震への備えを紹介します。大地震は「人間」の時間軸ではなく、「地球」の時間軸で考えなければならない災害で、いつ生じてもおかしくありません。人の安全を確保するために、あるいは対策を怠ったゆえに生じた被害による後日の訴訟リスクを回避するために。今回は地震直後、地震の揺れから店舗とお客様の身の安全を守るための準備について考えてまいります。

緊急地震速報が鳴った数秒で何ができるか

「ピロピロン!ピロピロン!緊急地震速報です、強い揺れに警戒してください…」、あの心臓に悪い緊急地震速報のアラーム音をテレビやラジオで、スマートフォンや携帯電話で聞いたことがあるでしょう。店舗向けの緊急地震速報サービスに加入されているお店もあるかもしれません。

ところでこの緊急地震速報、どのようなものなのかを理解されているでしょうか?

緊急地震速報は「予知」ではなく「速報」です。大地震が発生した際、地面深くの震源から地表に揺れが伝わりますが、「早くて弱い揺れ」を全国1,600か所以上の観測点がすばやくキャッチして、「遅くて強い揺れ」が到達するまでの時間差を利用し、速報を配信しています。

この早い揺れと遅い揺れの時間差が長いほど、余裕を持った速報が流れ、「強い揺れに警戒してください、あと○秒…」という数字が出せることになります。ということは、地震発生の場所が真下、直下型の地震である場合は、早い揺れと遅い揺れが同時に到着することになるので、速報が間に合わない場合があります。

緊急地震速報は、地震の前に鳴らない可能性もあるというスタンスで利用する必要があります。アラームが鳴った瞬間に揺れ始める、あるいは揺れてからアラームが鳴り始める、という可能性を考慮しながら、間に合った場合の数秒間でどのような行動が取れるか、を日頃から考えておかなければなりません。

最重要な地震対策は「建物の耐震化」

さて、第4回でも触れておりますが、地震対策でもっとも重要な項目は「建物対策」です。商品棚を固定する、避難訓練を行う、消火器を設置するなどのあらゆる地震対策は、そもそも建物が無事であった場合にはじめて役立ちます。

建物対策としてまず行うのは、店舗が入店している建物の築年数や施工年月を調べることです。

日本の建築物は、建築基準法という法律に定められた「耐震基準」で頑丈さが定められており、この耐震基準は大きな地震が発生するたびに繰り返し見直しがされ、新しい基準になるほど地震に対する強度が増しています。

最重要な基準が、「1981年(昭和56年)6月1日」の改正です。この日付よりも後に「建築確認申請」を受けて立てられた建物を「新耐震基準」、この日付より前の建物を「旧耐震基準」と区別しています。新耐震基準の建物は、震度6弱以上の大地震の直撃を受けても設計上はすぐに倒壊しない作りになっており、過去の大地震の被害統計(※) をみても、この通りの結果となっています。

まず確認すべきなのは、店舗のある建物が新耐震基準なのか旧耐震基準なのか。古い建物である場合には、まず何よりも建物対策を行わなければなりません。耐震診断を受けた上で耐震補強工事を行う、あるいは店舗の移転を行うなどの対策や検討が必要です。いずれもすぐにできる対策ではありませんが、大地震対策をきちんと行う場合には不可欠な要素となります。

※参考
国土交通省|建築:住宅・建築物の耐震化について
http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_fr_000043.html
国土交通省|「熊本地震における建築物被害の原因分析を行う委員会」報告書のポイント
https://www.mlit.go.jp/common/001155087.pdf

店舗内の「転倒・移動・落下・飛散」を防ぐ準備

建物に問題がなければ、次に行う対策は「店内の安全対策」です。具体的には以下のような対策を講じることになります。商品を含めあらゆる「モノ」を固定することは難しいため、転倒すると大ケガをする、通路をふさぐ、など影響の大きな対象から実施します。

転倒防止対策

店内の商品棚、ショーケース、冷蔵庫、また事務所にあるキャビネットなど、背丈より高く転倒する恐れがあるものや、人に直撃をした際に死傷者が出かねないものなどは確実に固定を行います。最も効果が高いのは、壁・床・天井に対して、ボルトなどを用いた直接固定ですが、構造的に難しい場合は粘着マットタイプや突っ張りタイプの器具なども併用して対策を行いましょう。

移動防止対策

車輪付きの陳列棚、大型のワゴン、また事務所にある複合機など、キャスター付きの什器や設備は、地震の強い揺れに見舞われると店内を激しく移動し、人体に衝突すると大ケガをさせる場合があります。そのため、キャスターを覆う土台を床に固定したり、頻繁に移動させたりする設備の場合は確実に車輪をロックするなどの対応が必要です。

落下防止対策

商品棚などを固定しても、大量の落下物に見舞われるとやはり大ケガをする恐れがあります。小売店などの場合はその特性上、商品全てを固定することは難しいため、できる限りの対策を講じていきましょう。具体的には、商品棚には転倒防止のバーを設置する、棚板に滑り止めのシートを敷く、また棚の上部に保管する在庫だけはベルトやネットで固定する、などの対策があげられます。

飛散防止対策

店舗にかかせないガラス対策も重要です。割れないようにするためには、ガラス製の陳列棚やインテリアの転倒防止対策を行ったり、商品が落下したりしてガラスに衝突しないような対策を。割れても飛び散らないようにするためには、ガラスの棚板、ショーケースやショーウィンドウなどに飛散防止フィルムを貼っておくことが有効です。フィルムにはUVカット機能が標準でついているため、平時の商品保護に役立つメリットもあります。

まとめ

突発的に発生する大地震は、事前対策の有無がそのまま店舗やお客様の安全に直結します。しかし、店舗の努力だけではどうにもならない津波や土砂災害への備えと異なり、地震対策は店舗単体の対策だけでも、限りなく被害をゼロに近づけることが可能です。できる箇所からぜひ対策を行ってください。次回は、地震の揺れをやり過ごしたあとの対策について紹介します。


執筆者:ソナエルワークス代表 
    高荷智也(備え・防災・BCP策定アドバイザー)
「自分と家族が死なないための防災対策」と「企業の実践的BCP策定」のポイントをロジック解説するフリーの専門家。大地震や感染症パンデミックなどの防災から、銃火器を使わないゾンビ対策まで、堅い防災を分かりやすく伝えるアドバイスに定評があり、講演・執筆・コンサルティング・メディア出演など実績多数。著書に『中小企業のためのBCP策定パーフェクトガイド』など。1982年、静岡県生まれ。

【災害対策シリーズ】
第1回 防災だけじゃだめ?店舗に“今こそ”必要なBCP・事業継続計画とは?
第2回 大規模停電、店舗としてできる停電対策は?
第3回 2019年は大地震3回・大規模台風2回。過去を振り返り、店舗を守る対策を学ぶ
第4回 地震対策から保険の見直しまで。2020年に向けて行いたい事前対策とは?

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