2019年12月12日

お役立ち情報 防災だけじゃだめ?店舗に“今こそ”必要なBCP・事業継続計画とは?【災害対策シリーズ・第1回】

地球の陸地面積のわずか0.25%に、台風・噴火・大地震の数割が集中する自然災害大国・日本。北海道から沖縄までどこにでも最大級の地震や水害が生じる恐れがあるこの国において、災害は「生じるかどうかではなく、いつ起きるか」で考えなくてはなりません。「有事への備え」は自店だけでなくお客様を守るためにも不可欠な要素ですが、直接売上につながるものではないため、実施するかどうかは店舗に委ねられます。だからこそ、目に見えない安全に投資している、本当にお客様のことを考えた「いいお店」かどうかは、非常時にこそ分かるのです。「想定外」で済ませないようにする準備を実施しましょう。

防災は災害に対して1:1で実施

防災対策の実行には原則があります。それは「想定される災害と1:1で実施する」ことです。

大地震の揺れに備えるのであれば、店舗什器の固定やショーウィンドウの飛散防止対策を行います。台風による浸水に備えるのであれば、土のう・止水板による店舗の水没対策や重要物の移動を準備します。火災に備えるのであれば、調理器具のIH化で火元をなくしたり、消火器などの設備を導入したりすることになります。
つまり、どの災害にも対応できるような防災策を考えるのではなく、想定する一つひとつの災害リスクに対してそれぞれに準備が必要なのです。

このため、まずはハザードマップなどを参考に、店舗周辺でどのような災害が発生するのかを調べる「災害リスク想定」を実施し、求められるリスクに対し1:1の対策を考えるのが防災対策の基本となります。災害発生時、準備した対策が効果的に働けば被害を限りなくゼロに近づけることができるため、店舗を災害から守る手段としての防災対策は有効です。

ところがこの防災対策には、2つの落とし穴があります。

①防災が対応できるのは「想定内」の事態だけ

・大地震で想定よりも強い揺れが生じ、商品棚は転倒しなかったが商品が全て落下して負傷者が生じてしまった
・50cmの浸水を想定して止水板を準備していたが、70cmの浸水が発生して店内が水没してしまった
・火災の発生に備えて複数の消火器を準備していたが、人がいない時間に隣の建物からの類焼を受けて対応できなかった

など、いずれも十分に考えられる事態ですが、このような「想定外」の発生に対しては防災対策で対処することが当然にできません。

しかし店舗の経営は、このような想定外による被害が生じた場合でも維持しなければなりません。「想定外だからしかたがない」と諦めず、どうにかして営業を継続するための対策、あるいはできるだけ早期に営業を再開させるための準備が必要になります。防災対策は「想定の範囲内の災害が生じた際に、その被害を防ぐ」ための準備ですので、想定の範囲外の事態に対しては別の方法で対策を講じる必要があるのです。

②防災が対応できるのは「店舗内」の対象だけ

さらに2つ目の落とし穴です。例えば、

・大地震の影響で仕入先が被災して商品や食材の調達ができなくなった
・店舗の機材メンテナンスや消耗品を補充してくれている外注先が機能不全に陥り、通常の営業を行うことができなくなった
・店舗やスタッフは無傷だが、広域の停電で全ての機材が利用できなくなった
・そもそも店舗の営業エリアが被災地となり、通常の営業をしている場合ではなくなった

というような事態も想定されます。

無限の予算と時間をかければ、店舗とスタッフを限りなく100%守るための対策を行うことができます。ところが、仕入先、外注先、ライフラインといった「外部」にある「経営資源」に対しては、自店舗が防災対策を施せないので、災害により利用できなくなる可能性があるのです。

防災対策は「店舗内部にある経営資源を守る」ための準備ですので、店舗の外部から調達する対象については「それが使えなくなったらどうするか」を前提とした対策が必要になります。

お客様が来店できなくなったらどうするか? 非常時のサービスを計画しておく

さらに、自店舗の営業エリアが被災地となった場合、そもそもお客様が平常どおり来店することができませんし、扱うサービスによっては非常時に不要とされるものもあります。お客様の「防災」を肩代わりすることはできませんので、「お客様が来店できなくなったらどうするか?」を検討しておく必要があるのです。

例えば、
・菓子類を製造販売する店舗が平常営業を取りやめて、避難所向けにパンやおにぎりを提供する
・ホテルやスーパー銭湯などが一時的に浴場を開放する

といった事例は分かりやすいですが、そうした活動を行う意思があるのであれば、「非常時向けのサービスを行うためにどんな準備が必要か」を計画しておくとスムーズな対応を行うことができます。

また近年の浸水害などでも、地域のパチンコ店が車両の避難場所として立体駐車場を提供したという事例もありますし、コンビニエンスストアなどは災害時「指定公共機関」に指定され、地域や帰宅困難者への支援活動を行うことになっているため、やはり非常時に向けた計画を策定しています。これらは「防災対策」だけでは対応ができないことです。

被害の発生を前提に準備をするBCP(事業継続計画)

ご紹介した防災対策の弱点①・②をまとめると、防災対策で対応できるのは「店舗内にあるものを想定可能な事態」から守ることだけ、と表現するこができます。想定していなかった事態が生じて被害が発生した場合への対処、外部から調達するものが利用できなくなった場合への対処は、「防災」以外の方法で準備をする必要があるのです。これを行うのが「BCP(Business Continuity Plan/事業継続計画)」です。

BCPを策定する大前提として、成功すれば被害をゼロに近づけることができる防災はもちろん重要です。特に「人命」を守るための対策や、失ってしまうと再度調達することが不可能な「情報」を守るための対策は十分な防災を行う必要があります。しかしそのほか、「建物」「設備」「商品」「ライフライン」「取引先」といった要素については、何かしらの事態で被害が生じ、利用できなくなることを前提とした計画が欠かせません。

BCPとは「被害が発生した場合の損失を最小にするための準備・計画」を包括する対策です。むろん事前に行う防災対策もBCPの重要な要素ですし、停電でレジが使えなくなる事態に備えてノートと電卓を準備しておいたり、火災発生時に顧客を外部へ誘導するための避難訓練を実施したり、または営業停止期間の固定費をカバーするためのつなぎ資金を確保しておくといったリスクファイナンスもBCPの要素となります。

「①防災対策」で被害を減らし、防災で対処できないあるいは失敗した場合の対応として、被害を受けた対象を「②再調達」するための計画を立て、それでも発生してしまう損失への対応として「③リスクファイナンス」を実施する、これがBCPの大きな要素となります。これを平時から管理し、また非常時にすぐ実行するため、さまざまなドキュメント・マニュアルを作成していくことになるのです。

当シリーズでは、店舗のBCP策定と、その前提となる防災対策の実施について、さまざまなポイントをご紹介してまいります。

まとめ

「天災は忘れた頃にやってくる」という言葉がありますが、自然現象としての地震や台風は頻繁に発生しています。しかし私たちが防災対策を「忘れた」瞬間、その自然現象は「災害」となり経営を直撃するのです。店舗経営の当たり前として、ぜひ防災とBCP策定に取り組んでいきましょう。


執筆者:ソナエルワークス代表 
    高荷智也(備え・防災・BCP策定アドバイザー)
「自分と家族が死なないための防災対策」と「企業の実践的BCP策定」のポイントをロジック解説するフリーの専門家。大地震や感染症パンデミックなどの防災から、銃火器を使わないゾンビ対策まで、堅い防災を分かりやすく伝えるアドバイスに定評があり、講演・執筆・コンサルティング・メディア出演など実績多数。著書に『中小企業のためのBCP策定パーフェクトガイド』など。1982年、静岡県生まれ。

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