コラム お役立ち情報
台風・大雨被害に備える!ハザードマップで店舗の想定被害を把握しよう【災害対策シリーズ・第9回】

2020年10月30日
※掲載内容は公開日時点の情報です。現在と異なる場合がございます。
このエントリーをはてなブックマークに追加

執筆者:ソナエルワークス代表 
    高荷智也(備え・防災・BCP策定アドバイザー)

「自分と家族が死なないための防災対策」と「企業の実践的BCP策定」のポイントをロジック解説するフリーの専門家。大地震や感染症パンデミックなどの防災から、銃火器を使わないゾンビ対策まで、堅い防災を分かりやすく伝えるアドバイスに定評があり、講演・執筆・コンサルティング・メディア出演など実績多数。著書に『中小企業のためのBCP策定パーフェクトガイド』など。1982年、静岡県生まれ。

有事のときに本当に“いいお店”かどうかが分かる。お客様、スタッフ、そして店舗を守るための災害対策シリーズ、第9回は「水害対策」。想定外の被害を想定内にするために必要な、水害に関するハザードマップ確認のポイントをご紹介します。


台風や大雨により生じる被害

台風や大雨によってもたらされる風害・水害は、大きく分けると「暴風害」「浸水害」「土砂災害」の3種類に分類されます。それぞれの特徴を最初に把握しておきましょう。

どこでも巻き込まれる「暴風害」

暴風による被害は、大地震による揺れと同じように、日本中どこでも発生する可能性があり、店舗がどこに立地していても対策が必要です。風の強さと吹き方によって被害は大きく変わるため、下記の表※1を参考に対策を検討するのがよいでしょう。

図1:風の強さと吹き方

基本的な対策は、屋外に設置している看板や資機材を収納することです。さらに、飛来物による窓・ドア・ショーウィンドウなどのガラス破損を防ぐために、シャッターを取り付けておいたり、飛散防止フィルムを貼り付けておくといった物理対策が中心です。また、暴風の影響で停電が生じることもあるため、停電時に営業を継続したい場合は手作業による代替作業を準備しましょう。

<出典元>
※1 気象庁ホームページ https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/yougo_hp/kazehyo.html

   「風の強さと吹き方」

地形に依存する「浸水害」

浸水害は、生じやすい場所と生じづらい場所が存在します。場所によって発生しやすい浸水害の種類を下記の表にまとめました。

場所災害の種類
海辺台風による高潮
河川の近く大雨による洪水
周囲よりも相対的に低い土地下水があふれて街が水没する
内水氾濫

上記の他にも海辺の場合は大地震による津波も、浸水の一種として対応が必要です。店舗が路面や地下に立地する場合は、浸水で甚大な被害をこうむる可能性があるため、避難および物品移動の準備や、開口部への止水板、土のうの設置計画などが必要です。

発生時の被害が大きい「土砂災害」

土砂災害は、建物の流出、冠水など、店舗存続にも関わる甚大な被害をもたらすこともあります。予兆なしで突発的に発生することもあるため、自店舗が危険なエリアに存在する場合は、気象庁からの警報や自治体からの避難情報が発表された段階で、早めに避難しなければなりません。

なお、山間部などに店舗を構えることが必須な業態では、土砂災害を前提とした計画を立てる必要があります。出店計画中など立地をある程度選べる場合は、土砂災害の生じにくい場所に店舗を構えるといった対策も有効です。

ハザードマップで店舗への影響を確認

救助どこでも生じる可能性のある暴風被害を事前予測することは難しいですが、浸水害と土砂災害については自治体などが発行するハザードマップを確認することで、自店舗に対するリスクをある程度把握することができます。ハザードマップについては第4回第7回で既に触れていますが、今回は水害対策を想定した活用方法を詳しくご紹介します。第3回で紹介したとおり、2019年に起きた災害は、実際の被害がハザードマップの想定と多く一致していました。今後の対策に役立てるために、今一度必要な事前対策の検討や、避難開始のタイミングを定めておきましょう。

店舗のある自治体のハザードマップを確認する

自店舗が立地する自治体のハザードマップを確認します。防災課や危機管理課など、自治体の窓口で入手することも可能ですが、HPで公開している自治体も多いのでパソコンまたはスマートフォンで確認することもできます。

「○○市 水害 ハザードマップ」などのキーワードで検索をするほか、各自治体のHPや国土交通省の「わがまちハザードマップ」にアクセスすることで探すこともできます※2

図2:東京都千代田区の洪水ハザードマップ(荒川氾濫)

<出典元>
※2 千代田区|千代田区洪水避難地図(洪水ハザードマップ)荒川版

重ねるハザードマップを確認する

自治体のハザードマップで、自店舗に何かしらの影響が生じることが分かったら、国土交通省の「重ねるハザードマップ」をチェックしてみてください※3。自治体のハザードマップは市区町村区切りであるため、店舗が複数の街に点在する場合や、店舗とスタッフの居住地が異なる場合、被害の全容を把握することがやや難しくなります。

重ねるハザードマップは、パソコンまたはスマートフォンから無料でアクセスすることができる地図です。任意の地点を中心に、津波・洪水・土砂災害の影響を重ねて表示できます。ページ上部の入力欄に住所を入れて地点表示し、ページ左上のボタンで表示させたいハザードマップを選択すれば、すぐに地図を閲覧できます。

図3:東京都千代田区を中心とした重ねるハザードマップ(洪水・土砂災害・津波)

<出典元>
※3 国土交通省|重ねるハザードマップ https://disaportal.gsi.go.jp/maps/

自治体をまたがって広範囲で地図を確認できるため、複数店舗および店舗スタッフの自宅の位置などをふまえて広い視点で影響を見ることができます。

ハザードマップは複数を確認し、定期的に見直す

ハザードマップは、その地域で生じる恐れのある災害の種類の数だけ作成されます。ひとつだけを見て判断するのではなく、全ての地図を見て影響を確認してください。特に洪水ハザードマップは、河川の種類ごとに影響範囲や状況が変わるため注意が必要です。

また、ハザードマップは定期的に見直されており、以前安全だった場所が想定被害範囲になっている場合もあります。年に1回は更新の有無を確認することが重要です。

ハザードマップの確認ポイント

ハザードマップを確認する際には、店舗に与える影響がどの程度かを想像することが重要です。特に自店舗が以下に該当するエリアに立地する場合、その場に留まると命に危険が及ぶ恐れがあるため、早めの休業判断や避難の計画が必要です。

「土砂災害警戒区域」「土砂災害特別警戒区域」

このエリアでは、土石流・崖崩れ・地すべりなど土砂災害に巻き込まれる恐れがあります。土砂災害は発生後の避難では間に合わない可能性があるため、店舗を休業し、早めの避難をしなければなりません。

「家屋倒壊等氾濫想定区域(氾濫流・河川浸食)」

浸水深(浸水した際の地面から水面までの深さ)が浅い場所では、無理に屋外避難を行わず、建物内の高い場所に避難する「垂直避難」を行うことがあります。この場合は在庫・資機材の移動もあわせて行います。
一方、氾濫した水の流れが強く家屋倒壊の危険がある場所(氾濫流)や、水の流れで川岸が削られ土地ごと流失するような場所(河川浸食)については、店舗の建物ごと流される恐れがあるため、その場に留まることはできません。この場合は早めの避難が必要になってきます。

「想定浸水深が最上階の床高を上回る」場所

浸水深が店舗の最上階(路面店の場合は床上)を超える想定となった場合は、「立退き避難」が必要になることがあります。浸水の深さが浅ければ、土のう・止水板・防水シートなどを用いた止水対策を講じることで被害を軽減させられますが、完全に水没する想定ならば早い段階での避難計画が必須です。

まとめ

令和2年7月豪雨、2019年の令和元年東日本台風(台風19号)、同台風15号、2018年の西日本豪雨など、近年では大雨や台風による大規模水害も頻発しています。ハザードマップには「千年に1度」など最大クラスの被害が掲載されていますので、地図を確認しておけば想定外の被害をある程度事前に把握できます。水害対策の基本として、ぜひハザードマップを確認してください。次回は、台風・大雨時の情報収集の方法と水害対策について紹介します。


【災害対策シリーズ】
第1回 防災だけじゃだめ?店舗に“今こそ”必要なBCP・事業継続計画とは?
第2回 大規模停電、店舗としてできる停電対策は?
第3回 2019年は大地震3回・大規模台風2回。過去を振り返り、店舗を守る対策を学ぶ
第4回 地震対策から保険の見直しまで。2020年に向けて行いたい事前対策とは?
第5回 大地震に備える店舗の対応/前編~転倒・移動・落下・飛散対策には?~
第6回 大地震に備える店舗の対応/後編~二次災害と被害後のためにできること~
第7回 災害からお客様とスタッフの“命を守る”ための準備とは?
第8回 災害からお客様とスタッフの命を守るため、
    救助道具・応急手当・防災備蓄を準備しよう

第9回 台風・大雨被害に備える!ハザードマップで店舗の想定被害を把握しよう
第10回 台風・大雨時の情報収集の方法と店舗と命を守る水害対策

あなたに合った集客方法をご提案します

ページトップへ