コラム 販促・集客
【色彩心理】明るい寒色系の空間は長居しやすい?お客様の滞在時間と色の関係

2020年11月13日
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執筆者
株式会社ローズ・ウェッジ 代表取締役 うえた さより

株式会社ローズ・ウェッジ 代表取締役 うえた さより

集客の心理的アプローチ、科学性のある新しい売り方が特徴の経営コンサルタント。「経営者のための会社の競争力を高める集客戦略」というコンサルティングテーマをもち、指導している。リーマン・ショックから売上が上がったログハウスの会社、公共事業激減から10年右肩上がりの建設会社、過疎地に進出しグループ企業内顧客単価第1位になったスーパーなど危機的状況を救う。「色」「女性目線」をキーワードにした経営、マーケティングのセミナー、講演、コラム執筆、テレビ出演多数。

シリーズ「売りづらい時代のための色彩心理! 色がお客様に与える影響とは?」
お客様の集客は店舗運営の重要なポイントの一つです。集客に影響している「色」に対して、よくある勘違いは「店舗が目立つ」=「お客様が来る」と認識していることです。「色を使って目立つ」=「集客ができる」という考えは、どのような間違いなのでしょうか。ここでは、「色を使ってよく目立つ」の勘違いとは何か、色で集客ができるとは何かを説明します。

お客様の滞在時間に色が本当に影響するのか

筆者がお客様の滞在時間と色の関係を調べるきっかけとなった事例と、どの色が滞在時間を「長くする色」「短くする色」になるのかを説明していきます。

「明るさ」が原因で、改装一年後に閉店した本屋

駅ナカという一等地に店を構え、駅の利用者であれば誰もが知っている本屋がありました。しかしながら、その本屋は改装約1年後に閉店しました。
改装後の本屋からは、空間の色合いが都会的で「かっこいい」印象を受けましたが、筆者がひとつ気になったのは「うす暗かった」ということです。実際にその場で陳列された本を手に取り開いてみると、活字が読みづらく感じました。

私たちは、色の鮮やかさよりも、「明るさ」「暗さ」に非常に敏感に反応してしまいます。

自動車の運転をお客様に例えると、薄暗い本屋はトンネルです。トンネルに入った時、自動車は明るい場所へ向けて早く暗がりから脱出しようとします。この本屋のうす暗い空間は、トンネルと同じ現象を生んでいたのではないでしょうか?
空間のうす暗さがお客様滞在時間を短くし、本来長居することで数冊購入するはずだったお客様が1冊も買わずにすぐに店を後にしてしまったというような可能性が考えられました。
このことから筆者は、私たちが知覚する「明るさ」「暗さ」が、滞在時間や売上に影響すると考えました。

お客様の滞在時間を「長くする色」「短くする色」

滞在時間に関係するのは「明るさ」だけではありません。色も、滞在時間を左右します。

暖色系のだいだい色は、かの有名な牛丼チェーン店のシンボルカラーを想像するとわかりやすいでしょう。だいだい色は、時間の経過を早く感じさせる効果がある赤色と、消化器系を活発にさせ食欲を増進させる効果がある黄色を混ぜ合わせてできる色です。牛丼そのものの単価は安いため、客数を増やす回転効率を上げなければいけません。そのため、ひとり当たりの滞在時間を短くする必要があるのです。暖色系のだいだい色は理にかなった使われ方をしていると言えます。

筆者が指導していたあるホテルでは、宴会場で行われる宴会が時間内に終了することができずしばしば延長があったことが問題となっていましたが、寒色系だった宴会場の内装をベージュの暖色系メインに変えたところ、延長が減ったという事例もあります。

お客様の滞在時間を伸ばす店内の色の工夫とは?

店内とパンの色がほぼ同じだったパン屋の工夫

あるパン屋では入口横のトレーとトングを持って、パンを選びながら反時計回りに進んでレジへと進む売場となっています。通勤、通学時にパンを買われるお客様が多いため、滞在時間は短く顧客単価が低い状況でした。

人気のあるパンはなるべく店の奥の方に陳列する工夫をしていましたが、色の効果で滞在時間を伸ばして売上アップができないかと筆者は相談を受けました。
店内を見渡せば、だいだい色を中心とした暖色系かつ同一色相配色なので、食欲がわく空間です。しかし、店内とパンの色がほとんど同じで、単調な色合いが購買意欲を刺激しているとは思えませんでした。さらに、前述のとおり暖色系は滞在時間を「短くする」色です。

そこで、陳列しているパンのショーカードやPOP上部に季節を感じる色で線を引きました。だいだい色、黄色、黄緑色、薄い青色のグラデーション配色で作成したPOPをディスプレイしました。視覚的に訴えやすい配置と、寒色系の色使いで店内とパンの色合いに変化を加えました。
また、全体的に季節を感じる色の装飾をし、店内を高揚感溢れる空間に改善しました。結果、お客様の滞在時間が増え、さらにリピーターも増えました。あわせて人気のあるパンのコーナーを入口と対角線に当たる奥に配置したり、レジ回りにワンコインで買える季節限定の菓子パンを並べるなどして、パンや季節限定菓子パンが毎日完売するようになりました。色を効果的に使ったことで滞在時間を伸ばし、売上アップに成功したと考えられる事例です。

お客様に一方向、一点しか見られなかったケーキ屋の工夫

筆者はケーキ屋において「赤」色が大事だと考えています。ケーキ屋に行けば、入口からまっすぐ正面にショーケースがあり、ケーキが並べられているのが一般的です。私たちはよく無意識にイチゴのショートケーキを一番に、一点のみ見てしまいますが、それはイチゴの「赤」がよく目立つからです。重要なのは、赤で惹きつけた注意を別の商品に移すことです。

ショーケースの陳列方法として、筆者は赤色(例えばイチゴのショートケーキ)の左右にに、色相差をつけた補色色相配色か明度差をつけた色同士のケーキを並べて、メリハリをつけることが望ましいと思います。そうした工夫で、お客様は赤色の隣にも目が奪われるようになります。

東京都内に、寒色系で深みのある紺色をイメージカラーとした外資系のケーキ店があります。ケーキに当たる照明は明るいのですが、高級感がコンセプトのためかうす暗く洞窟にいるような気分にさせられる空間でした。
そこで、もう少し店内全体を明るくして、ショーケースのサイドには空間のアクセントとして深みのある赤色のオブジェをディスプレイしました。そして、その周囲に紺色の箱入りの焼き菓子を置いて赤と紺色で色相差をつけ、一点でも多くお客様に見てもらうように工夫しました。結果、お客様の滞在時間が伸び、顧客単価も上がりました。

まとめ

お客様は、店内の「明るさ」の度合いと青を中心とした寒色系の滞在時間を「長くする色」やだいだい色を中心とした暖色系の滞在時間を「短くする色」の影響を受けています。お客様の滞在時間を増やしたい、あるいは減らしたいといった悩みがあればぜひ、店舗の空間づくりで色を効果的に使いましょう。

【色彩シリーズ】
第1回 売りづらい時代のための色彩心理! 色がお客様に与える影響とは?
第2回 色彩心理に基づいた店内でのかしこい色の取り入れ方
第3回 売場づくりで気をつけたい相性の良い配色・悪い配色
第4回 明るい寒色系の空間は長居しやすい?お客様の滞在時間と色の関係
第5回 商品によって適切な店舗照明は変わる!購買意欲をアップさせる照明と商品の適切な組み合わせとは?
第6回 「目立つ店舗」=「集客ができる」は間違い!集客で色を活かす考え方

あなたに合った集客方法をご提案します

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