コラム
販促・集客
見込顧客と潜在顧客の違いとは?潜在顧客を掘り起こしてアプローチする方法
近年、店舗を持つ小売業は、ECとの融合、外出制限、新聞購読率の低下など、社会の変化にさらされ、これまでの集客を変えていく必要に迫られています。
そんな中、新規顧客の獲得にあたって、すでにお店への来店に興味のある顧客候補ばかりにアプローチしていませんか?未来のお客様は、店舗のある地域でその業種、商品、サービスを探している方ばかりではありません。
本記事では、新たに「潜在顧客」を捉えることで、新規顧客の客数増加を目指します。潜在顧客の見つけ方や、来店・購入につなげるためのアプローチ方法などを解説します。
目次
小売店舗における「潜在顧客」と「見込み顧客」の違いとは
未来のお客様を表す言葉として「潜在顧客」「見込み客」という言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか。この2つの違いはわかりますか。
明確な定義があるわけではありませんが、マーケティングの観点から両者の違いを説明しましょう。
新規顧客の候補を見落としているかも?「潜在顧客」に注目
顧客に商品やサービスを購入してもらうには何らかの「欲求」が必要です。欲求には大きく分けて2種類あります。
1つ目は、友人と街を歩いている時に「居酒屋に行きたい」とか「カフェに行きたい」と考えることがありますよね。このように具体的なイメージを伴う欲求を「ウォンツ」と言います。
2つ目は、具体的な店舗のイメージではなく、「友人と落ち着いて話したい」と漠然と考えることがあります。このような欲求を「ニーズ」と言います。
居酒屋ではスタッフが呼び込みをして、新規顧客にアプローチすることがあります。「居酒屋に行きたい」というウォンツを抱いている顧客に、「居酒屋はどうですか?」と声をかければ、話を聞いてくれる可能性は高そうです。
一方、ウォンツが明確でなく「友人と落ち着いて話したい」というニーズを抱えている顧客に同じアプローチをしても、「うーん、居酒屋は賑やかそうだし、ちょっと違うんだよな…」と感じられてその場を通り過ぎてしまうかもしれません。しかし、アプローチを変え、「静かな個室がありますよ」と伝えたら、お客様は「あれ?自分のニーズを満たせるかもしれない」と足を止めてくれる可能性が高まります。
このように、目の前の未来のお客様が、自店に対する具体的なイメージを伴う”ウォンツ”を持っているかどうかで、アプローチを変えることが新規顧客に対する集客のポイントです。ウォンツを抱いているかどうかによって、未来のお客様を以下のように分類することが出来ます。
【未来のお客様の分類】
見込み客 |
ウォンツを持っている未来のお客様 例)「居酒屋に行きたい」という具体的な商品・サービスを欲している |
潜在顧客 |
自店で満たすことができるニーズを持っているが、まだウォンツに気づいていない未来のお客様 例)具体的な商品・サービスを欲していないが、「落ち着いて話がしたい」など満たされない感情を抱いている |
当然ながら、自分のウォンツに気づいている「見込み客」は、商品・サービス・店舗を自ら探していますから、店舗にとって集客がしやすいお客様です。その分、競合店舗との戦いは厳しいものになります。同じ業種の間で見込み顧客を奪い合うのは、手間とコストをかけた消耗戦になりがちです。
そこで、ポイントとなるのがまだウォンツに気づいていない「潜在顧客」。しかし、潜在顧客は商品・サービス・店舗を自ら探しているわけではないため、店舗側がその存在を見つけ、アプローチしなくてはいけません。
では、潜在顧客はどうやって見つければよいのでしょうか。
潜在顧客を見つける第一歩は「ニーズ」を見つけること
先程ご説明したとおり、「潜在顧客」とは「自店で満たすことができるニーズを持っているが、まだウォンツに気づいていない未来のお客様」を指します。そのため、潜在顧客を見つける第一歩は、「自店で満たすことができるニーズ」を見つけることです。
スーパーを例に、具体的に考えてみましょう。
すでに自店に来店しているお客様は「スーパーに行って買い物がしたい」というウォンツに気づいているお客様です。ではウォンツを抱いた理由はなんでしょうか?
お客様に理由を聞いてみると、ある人は「惣菜が美味しいから」と答えたとします。(図1の「顧客層1」)。その人に、なぜ美味しい惣菜を求めるのか聞いてみると、「家族に喜ぶ食卓を手軽に用意したいから」という答えが返ってきました。これらの答えがスーパーに来るお客様の「ニーズ」です。
そこで、広く商圏を見渡してみましょう。「家族に喜ぶ食卓を手軽に」というニーズを満たすには、スーパーだけではなく、飲食店のテイクアウトや、ミールキットも競合になりえます。そのようなサービスを使っている人に、自店でも手軽に美味しい惣菜が買えることが伝われば、来店につながる可能性があります。
つまり、同じニーズを持ちながら別の商品やサービスを使っている人は、自店にとっての「潜在顧客」になるわけです。潜在顧客にアプローチすることで、新規顧客の候補を増やすことができます。
潜在顧客へのアプローチは段階的に
潜在顧客にアプローチする際のポイントは、”店舗との関係の深さによって、販促の方法を変えること”です。
男女の関係において、いきなり知らない人に告白されて「はい、お付き合いしましょう!」とはなりづらいもの。これは、店舗とお客様の関係においても同様です。徐々に関係性を深め、最終的にファンに育てる。これが、店舗における販促の定石です。
顧客の状況に合うアプローチ方法を具体的に考えるためには、「誰に」「何を」「どのように」の3つの観点で検討を進めます。まずは「誰に」を考える具体的な方法を解説します。
アプローチする「潜在顧客」の見つけ方
「ニーズ」に着目すると、非常に多くの消費者が、新規顧客の候補になり得えます。しかし、すべてのニーズに対応しようとするとコストも手間もかかる上、お店の特徴も伝えづらくなり、結果的に選ばれないお店になってしまいます。
そこで、自店の強みを活かせるニーズを持つ潜在顧客に絞り込んでアプローチすることが効果的です。潜在顧客を絞り込む手法の一つとして、STP分析を紹介します。
STP分析とはSegmentation(セグメンテーション)、Targeting(ターゲティング)、Positioning(ポジショニング)の頭文字を取った分析手法です。STP分析を行うと競合他社との差別化要因が見極められるため、よりファン化しやすい潜在顧客グループを予想することが出来ます。
では、一つずつ説明していきますね。
S(セグメンテーション)
特定の条件をもとに、顧客をグルーピング化することを「セグメンテーション」と言います。グルーピング化する切り口はたくさんありますが、代表的な切り口を以下の表にまとめました。実店舗では地理的変数や人口動態変数を重視することが多いですが、モノが溢れる時代に競合と差別化する上では、心理的変数や行動変数も重要です。
切り口 | セグメンテーションの例 | 具体例 |
地理的変数 |
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人口動態変数 |
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心理的変数 |
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行動変数 |
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T(ターゲティング)
セグメンテーションで決めたグループの中から、1つまたは複数のグループを選び、自店のターゲットを決めます。その際、自店のエリアにお住いの方はどのような属性が多いのかを調べ、現実的に来店が想像できる、母数の多いターゲットを設定することが大事です。
象徴的な特徴を集めた理想の顧客像「ペルソナ」を設定することで、イメージが沸きやすく、関係者間の意思疎通に役立ちます。
具体的にイメージしやすくするため、ここでは、スーパーが、休日や夕方以外の来店を増やすために、ランチ時に食材数の多い糖質オフを特色とした弁当を売るケースを考えます。
潜在顧客は糖質オフ弁当自体には興味がありませんが、糖質オフ弁当で解決できるニーズを持っている人です。
このようにペルソナを設定すると、具体的な顧客イメージを想像することができ、スタッフそれぞれが想像する「潜在顧客」のイメージを共有することができます。
P(ポジショニング)
最後に、競合に対して自社の立ち位置を明確にします。具体的には、2つの軸をとって、自店と競合をマッピングします。2つの軸の取り方を迷ったら、自店が今後お客様からどんな形容詞で口コミされたいか、というブランディングの視点を入れるとよいでしょう。これがセグメンテーションで心理的変数、行動変数を定義すべき理由です。
STP分析を行うことで、どのようなニーズを持つ潜在顧客にアプローチすればよいのか、どんなところが自店の強みになるのかが明確になります。
では続いて、潜在顧客に「何を」アピールすべきか、考えていきましょう。
「潜在顧客」に何を伝えるか?自店の強みの見つけ方
先述したとおり、アプローチ方法を具体化する上では、「誰に」「何を」「どのように」の3つの観点で検討を進めていきます。「誰に」の観点はここまでSTP分析を通して定義してきました。続いて潜在顧客に「何を」アピールすべきか考えていきましょう。
商品やサービスをアピールしても、潜在顧客には刺さらない
潜在顧客には何をアピールするのが効果的でしょうか。
見込み顧客は「糖質オフ弁当、発売中!」と伝えれば振り向いてくれます。一方、潜在顧客は糖質オフ弁当自体には興味がありません。前述の居酒屋の例のように、ウォンツのない顧客には、いかに自店を利用することでニーズを満たせるかを伝える必要があります。
潜在顧客にはニーズとともに強みを伝える
ここで図4のペルソナをもう一度振り返ってみましょう。働き盛りのビジネスパーソンは、「仕事をバリバリこなしたい」というニーズがありそうです。このように潜在顧客が抱く「ニーズ」を洗い出してみましょう。
続いて、そのニーズを、自店や扱う商材によってどのように満たすことができるのかを検討します。例えば、糖質オフ弁当が持つ以下のような強みは、仕事をバリバリしたいビジネスパーソンの以下のニーズを満たせそうです。
- 食材数が多く栄養バランスに優れている▶︎健康な体を維持できる
- 糖質オフの食事は眠くなりにくい▶︎午後の仕事に支障がでにくい
- 弁当なので手早く食べることができる▶︎余裕を持って午後の始業を迎えられる
アプローチの際は、これらの強みを、ニーズとともに訴求します。「ビジネスパーソンと共同開発した、午後もバリバリ働けるランチ。栄養価が高く、眠くなりにくい…」といった具合に、ターゲットやニーズに絡めて、自店の強みを盛り込みましょう。
潜在顧客におすすめのアプローチ方法とは
ここまでで、「誰に」アプローチするか、「何を」アピールするかが決まりました。あとは「どのように」アプローチするかを検討します。
潜在顧客のライフスタイルに沿って接点を持つ
潜在顧客は、商品・サービス・店舗を探しに来てくれませんから、店舗側からターゲットのいる場所に出向き、接点を持たねばなりません。
接点を検討する上では、ペルソナの1日の行動や商品・サービスを利用するシーンを具体的にイメージすることがヒントになります。24時間の行動を時系列で書き出してみましょう。その中で、潜在顧客と接点が持てそうな場所はあるでしょうか。
以下に、本ケースにおけるターゲットを想定しながら、実際のコンサルティングで効果が見られた具体的なアプローチ例を示します。
おすすめアプローチ方法(1) ネット検索
一般的に新規に店舗を見つけるときは「業種×地域」など、「ウォンツ」で検索をしますが、時に「落ち着いた場所」「ランチ」など「ニーズ」で検索することもあります。店舗側は潜在顧客のニーズを単語に落とし込み、SEOやMEOの施策をすることで、潜在顧客に情報を届けることができます。
- ライフスタイル:オフィス近隣のランチをGoogleマップで開拓する
- アプローチ例:Google ビジネス プロフィール(旧:Googleマイビジネス)において「ランチ」で検索した際に上位表示されるよう、MEO対策を講じ、糖質オフ弁当の写真、口コミ、投稿を継続的に増やす
おすすめアプローチ方法(2) プッシュ配信
スマホアプリのプッシュ配信は、能動的に情報を探していない潜在顧客に、情報を届けることができます。店舗を利用したことがない人にも、ショッピングモールや電子チラシサービスなどのアプリを通じ、プッシュ配信を行うことができます。
- ライフスタイル:ランチのタイミングで散策しながらお店を決める
- アプローチ例:ジオフェンスを使った広告を配信し、近くにいるユーザーに情報を届ける
電子チラシサービスShufoo!(シュフー)では、ジオフェンスを活用して意図したタイミング・エリアでPUSH通知ができます。そのため、11:00~14:00に商圏範囲に訪れた人に、「お得情報」としてランチの情報を届けることが可能です。さらにBeaconを使って来店計測をすることもできるので、広告の効果測定まで行うことができます※。
▶詳しくは資料をダウンロードし、ご確認ください。
※Beaconによる来店計測には別途費用が発生いたします。
おすすめアプローチ方法(3) SNSのタイムライン
SNSは交流のツールであり、アクティブユーザーが多いWeb媒体です。日頃ログインしているSNSに、自身のニーズにあった投稿がタイムラインに流れてくると、潜在顧客の目に留まるでしょう。具体的には口コミ施策や、ターゲティング広告の配信を行います。
- ライフスタイル:職場の人のSNS投稿を見て、気になったランチの店を試すようにしている
- アプローチ例1:弁当の店内POPや盛り付けを写真映えするように工夫し、SNSでシェアしたくなる工夫をする。
- アプローチ例2:糖質オフ弁当を買い、ハッシュタグ付きで投稿した人に、コーヒーをおまけでつけるキャンペーンを行う
おすすめアプローチ方法(4) キーマンの紹介
居酒屋における宴会の幹事のように、消費者向けの商材を扱う店舗であっても、利用や購入にあたって取りまとめを行う人がいます。キーマンに認知され、採用してもらうことで、潜在顧客の利用に結びつけることができます。
- ライフスタイル:総務や事務の担当者が、注文を取りまとめて弁当を買ってきてくれる
- アプローチ例:メニュー表をチラシとしてオフィスのポストに投函する。総務や事務担当者向けの試食会をする
おすすめアプローチ方法(5) 街角
交通広告、看板、近隣店舗のパンフレット置き場など、視界に入る場所に、潜在顧客のニーズにあった写真や単語を配置した掲示をしてみましょう。例えば、コロナ禍における緊急事態宣言中に「テイクアウトOK!」とのぼりに大きく料理の写真を配置して、近隣のテイクアウト需要を喚起することができた事例があります。
- ライフスタイル:ランチのタイミングで散策しながらお店を決める
- アプローチ例:通り沿いの屋外にランチ時間帯のみ売り場を設置し、呼び込みや弁当販売を行う
まとめ
潜在顧客は見込み顧客より広範囲に存在します。見込み顧客に育ちやすい層を見つけるためには、自店のお得意さまの来店動機を「なぜ?」「なぜ?」と深堀してニーズを把握し、自店の強みを自覚しておくことが重要です。このことにより、新たなセグメントから新規の来店を促進することと、既存のお客様を深く理解しファン化させる活動が両立し、商圏内でより強いブランドを築くことができます。