コラム 販促・集客
~大手スーパーマーケット元副店長が語るシリーズ⑩~【スーパー】発注ミスに配達ミス…その時、失敗をどうリカバリーしたか?

2019年11月07日
※掲載内容は公開日時点の情報です。現在と異なる場合がございます。
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新しいことへの挑戦は、常に失敗がつきものです。結果として失敗したとしても、失敗することを恐れず挑戦したことは会社やご自身の糧になるはずですし、次回、同じ失敗を繰り返さない策を講じることで、自身の成長や引き出しを増やし、ひいては魅力的な店舗づくりへ繋がるのだと思います。そういった“失敗”を通じてどのような視点をもつことが重要なのか、多くの部下を育てた経験のあるY氏のご意見を伺いました。

<Y氏プロフィール>
1993年某スーパーマーケット入社。主に本社のセールスプロモーション部で活躍された後、店舗にてその知見を活かした店舗づくりや販促を実施。画期的でユニークな手法を駆使され成果をあげられました。
本社勤務時は、朝ネットで注文すると夕方届く“ネットスーパー”を立ち上げ、大ブレイクを起こします。またShufoo!(シュフー)を導入し、店舗ページからチラシを確認できるように整備。2010年には、いち早くスマホ公式アプリをリリース。
長期に渡り会社のIT事業に携わり実績を残した後、2016年、副店長として店舗へ配属。ITやマーケティング戦略の知見と、パートナー社員の知見を最大限に活かし、さまざまな取り組みを実施しました。

一番の「リスク」はノーリスク症候群になること

スーパー元副店長・Y氏

皆さんは日々“良い仕事”をしたいと思いながら働いていると思いますが、“良い仕事”に繋がる成功事例を野球の“ヒット”に例えるならば、打率1割。10回に1回結果が出れば上々なのではないかと思います。
しかしながら最近の傾向を見ると、打率10割、つまり成功率100%を前提に仕事に取り組んでいる人が多いように感じます。
最初から打率10割を目指すため、失敗することを極端に恐れ、逆に“ノーリスク症候群”になってしまう。失敗を極端に恐れ、計画立案に極端な時間がかかる。実行に移したら失敗する、つまずくとフリーズしてしまい、リカバリーができない。

怪我をしたら?止血剤は?消毒薬は?治療にかかる費用は?などと起きてもいないケガ(失敗)に対して過剰に準備をしようとするため、時間だけがどんどん経過してしまい、結果、タイミングを逃す、他社に先を越されてしまうのです。また、仮説が成功率100%を前提としている為に、失敗した時にどう立て直すかの引き出しがない。

どんな仕事でも思い通りに進む事の方が少ないと思います。1つの仕事を長い時間かけてあたかも完璧だと錯覚する計画より、同じ時間に1000回バットを振り(挑戦を実行し)、その内100回でもバットに当てる事を目指して仕事をすることの方が大事なのではないでしょうか。

失敗しないことを考えるのではなく、こっちの道がだめならあっちの道に行ってみよう!など変化を恐れず対応し、最後までやりきることによって、失敗に対するリカバリー力が自ずとついてきます。
原因究明や再発防止策を考えることは、今起きている失敗をリカバリーしてからで十分。 リカバリーをしているうちに自然と答えは見つかってくるものです。

忘れられない失敗エピソード

新入社員の頃は、仕事のイロハもわからないため、失敗をするのは当然です。また、長く仕事をしていると、慣れたころに大きなミスをしてしまうことが多々あるのも事実です。
その中でも素晴らしいリカバリー力を発揮したエピソードをご紹介したいと思います。

その①発注ミス、発注飛ばし

小売業界にいると必ずと言っていいほど通る道が「発注ミス」です。
発注したつもりができていなかった。1ケース発注したつもりが100ケース届いたなど多くの担当者が経験していることと思います。その時、どうミスを打開するのか?それが大きなカギとなります。

私がスーパーマーケットの青果部門にいたころ、ほうれん草の発注を飛ばしてしまった担当者がいました。朝準備をしていてる時、入って来るはずのほうれん草が来てない。そうこうしている間に営業が始まります。
「商品は欠品中です。申し訳ありません」とお客様に謝ってしまうのは簡単な事かもしれませんが、当然あるだろうと買いにいらしたお客様は、そもそもその日のメニューを最初から考え直さなければいけないかもしれない。発注ミスでお客様に迷惑をかけることは、出来る限り避けなれければなりません。
さて、ほうれん草が入ってこない事が確定しました。お客様への迷惑を最小限に留めなくてはなりません。いかにリカバリーするか?これが大事、勝負です。

そして私達がとった対応はこうでした。
至近の市場や八百屋さんへ行き、必要分を購入して来て店頭で販売しました。
当然ながら儲けはありません。場合によっては赤字です。
しかしながら、「ほうれん草がない」たったこれだけで、お客様が他店に行ってしまうきっかけを作ってしまう事のほうがずっと怖い事だと思うのです。
全ての商品の品切れや発注ミスに同じ対応することは難しいですし必要はないかもしれませんが、お客様の献立に直結するような材料や、お客様心理で「あって当たり前」の品物については、なんとかしてリカバリーの手立てを講じる事が必要だと思います。

お恥ずかしながら、私の小売での長い経験の中で、こちらの明らかな失敗による欠品や品切れを何度も起こしました。その失敗に対し、結果としてリカバリーが効かなかったケースは山ほどあります。
ただ、起きた事に対してリカバリー策を考え、動くというアクションを起こせば、救える事もあります。それならば、やらない手はありませんよね。

その②ネット販売で宅配を承った商品がお客様に届かない

期日指定で宅配を承った商品が指定した日にお客様のもとに届かない。これも避けて通る事のできない失敗の1つです。
配送業者さんがミスをしている場合や、そもそもお客様から日付や時間指定を承っていないなど原因はさまざま考えられます。配送業者さんが起因の場合、お客様に納得いただけないケースが多かったように記憶しています。お客様にとっては、取引したのは商品を購入したお店であって配送業者ではないですからね。
原因はともかく、商品が届かないという事実があった場合にどう動くか。何が最善策なのかを考えなければなりません。
例えば誕生日や父の日、母の日、クリスマスなど、ハレの日の品がお手元に届くよう手配していたにも関わらず商品が届かないのは、致命的です。
なんとかお届けする方法を考える。ここからスタートです。逆にここが腹に落ちれば、以降はスムーズです。

以前、広島県在住のお客様から、商品が届かないというお問い合わせを頂いたことがありました。
幸いご注文の品の手配がついた為、当時の担当者には、商品を直接広島まで持っていくよう上司として指示を出しました。ハンドキャリーという対応です。
ただ、これにはドラマみたいな展開がありました。今でも鮮明に覚えています。
担当者は商品を揃え、広島へ向かう準備をしていると、今度は逆にお客様から、実は翌日東京に行くのでその時に受け取るのはどうか?というご提案をいただきました。
そうはいってもお客様の顔もわかりませんし、携帯電話の番号をお伺いする事もできませんでした。そこで担当者が考えたのは、お客様が乗る新幹線の便名、号車、到着時間を頂戴し、東京駅の新幹線のホームでお待ちして、お渡しする事でした。

お客様のお顔は分からない、お客様も担当者の顔はわからない。どのように乗り越えたと思いますか?
その担当者は、自分が担当者だと認識いただけるよう「〇〇社のXX(名前)でございます」というプレートを掲げ、大勢の乗客が乗り降りする新幹線のホームで立って待っていた、というのです。
お客様には無事に見つけていただき、ちゃんと商品を手渡しすることができました。
この対応の良し悪しは色々な意見があると思いますが、少なくとも私は、彼が今までの失敗から経験から導き出した、「かならずリカバリーする」「お客様との約束を最低限果たす」意志が生み出した本当に素晴らしいリカバリー策だったと思います。

小さな成功体験の積み重ねが次なる挑戦へのモチベーションに繋がる

担当者の積極的な挑戦を引き出すためには、やはり日々のコミュニケーションと部下からの「報・連・相」を徹底することによって、上司や同僚との信頼関係を事前に築きあげることが大切です。
安心して挑戦できる状況に身を置いているのだという事がわかっていれば、たとえ失敗しても次に進むことができると思います。
また、自分が行った企画が1000本の内1本でも当たると、成功体験になります。その成功体験が引き出しとなり次の挑戦の糧となったり、この先の色々な場面での助けになるのです。

まとめ

「上手い選手は全くミスをしないのではなく、ミスのリカバリーが早いからミスに見えていないだけ」という言葉を耳にしたことがあります。
挑戦するからこそミスが起きるのであり、それと同時に成長にも繋がるのだと思います。 ついつい失敗を恐れるあまり、無難な道に走ることが多くなりがちですが、失敗は経験値になりますし、リカバリーした経験を積み重ねることで、挑戦することを楽しめるようになりますね。

<大手スーパーマーケット元副店長が語るシリーズ これまでの記事はこちら>
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