コラム 販促・集客
~大手スーパーマーケット元副店長が語るシリーズ⑨~未来予想図シリーズ/アメリカ発「ブラックフライデー」は日本に根付くのか?

2019年10月07日
※掲載内容は公開日時点の情報です。現在と異なる場合がございます。
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最近テレビや新聞などでも「ブラックフライデー」という言葉を見かけるようになりました。
ブラックフライデーとは、アメリカの感謝祭の翌日にあたる11月の第4金曜日に開催される大バーゲンセールの事ですが、そのブラックフライデーを日本でも広げようと、2016年頃より流通大手が開催したのをきっかけに、ジワジワと人気になりつつあるイベントです。
ちなみに、ブラックフライデーがなぜブラックなのかは、諸説ありますが、どのお店も商品がたくさん売れて“黒字”になる日だから、という説が有力なようです。 今回は、「ブラックフライデー」に焦点を当て、どのような視点で考えると日本に根付くベントになるのかなど、多数の催事施策に携わったY氏のご意見を伺いました。

<Y氏プロフィール>
1993年某スーパーマーケット入社。主に本社のセールスプロモーション部で活躍された後、店舗にてその知見を活かした店舗づくりや販促を実施。画期的でユニークな手法を駆使され成果をあげられました。
本社勤務時は、朝ネットで注文すると夕方届く“ネットスーパー”を立ち上げ、大ブレイクを起こします。またShufoo!(シュフー)を導入し、店舗ページからチラシを確認できるように整備。2010年には、いち早くスマホ公式アプリをリリース。
長期に渡り会社のIT事業に携わり実績を残した後、2016年、副店長として店舗へ配属。ITやマーケティング戦略の知見と、パートナー社員の知見を最大限に活かし、さまざまな取り組みを実施しました。

ブラックフライデーとは?

スーパー元副店長・Y氏

ブラックフライデーという言葉を聞いたことが無い方も少なからずいらっしゃると思いますが、もともとは海外が発祥で、アメリカの感謝祭の翌日から始まるクリスマス商戦のセール初日の事。小売り各社がこの期間だけで1年間の2割の売り上げを叩き出すことから、日本でも同様にセールを行うと消費の活性化につながるのでは?という考えから、2016年に始まったイベントの事です。

2019年のブラックフライデーは、11月29日(金)になりますね。

日本のブラックフライデーの反響は

今のところはどうも「特売」「セール」というイメージが先に立つのと、取り組みが始まったばかりの為、まだまだ広まっていないかなと思います。

とはいうものの、今でこそ10月31日のハロウィンは、仮装をしたりパーティーを開催したりするものとしてすっかり定着していますが、10年程前まではそうではなく、お店でもハロウィン=かぼちゃのお祭りの訴求がほとんどで、大きなかぼちゃを展示して盛り上げるような程度で、なかなか消費者側に浸透しないイベントでした。

それがここ数年で、小学校や幼稚園、子供会で仮装をするなど、消費者側からハロウィンを楽しむという下地ができ、徐々に、仮装を楽しむイベントから、かぼちゃにちなんだ料理を作りパーティーを開くなど、一大イベントの一つとなりました。

一方、ブラックフライデーはどうかというと、現状、今のままでは価格訴求販促を行っているだけのイベントになりがちで、顧客目線でブラックフライデーを楽しむイベントとは言い難く、小売企業としても消耗戦への危惧から二の足を踏んでいるように感じます。

価値観をどのように定義するかで今後の動向が左右される

そもそものブラックフライデーは、当然アメリカのライフサイクルの節目のタイミングが、たまたま11月の最終週の金曜日にあたるから盛り上がるのであって、その文化をそのまま持ってきても、日本のライフサイクルには当てはまらず、顧客目線でもブラックフライデーって何?が先に来てなかなか定着しないのではないかと思います。

ただ、ハロウィンが国民的な一大イベントに化けたように、ブラックフライデーにも化ける可能性はあるでしょうね。そのためには、「ブラックフライデーは楽しい」という雰囲気をどう作り上げていくか次第。日本人の心理に合わせた「日本流のブラックフライデー」が出来上がったときにはじめて根付くのではないでしょうか。

実は小売業界では11月は値下げをしなくても商品が売れる時期

小売業界では10月のハロウィンイベントが終わると同時にクリスマスの施策が始まるため、11月はホっと一息つきつつ、年末商戦に向けて英気を養いたい時期と言えます。

とはいうものの、11月のブラックフライデーを取り入れたくないという後ろ向きな気持ちではなく、お客様に訴求力が高いイベントになり得るのであれば、小売業界としてもどんどん施策を仕掛けていきたい分野ではあります。

しかしながら、衣料品を例にとると、11月はいよいよ冬を感じるように気温が下がり、冬物の実需気を迎えます。つまり、無理に価格を下げなくても必要に駆られて商品が売れます。12月になるとクリスマスもすぐに来ますし、1か月も経てばバーゲンが始まるので、顧客心理では少し冷静に買うタイミングを見極める状態になります。

バーゲンを待つと欲しい商品が無くなってしまうので、定価でも欲しい商品を手に入れようとする人もいれば、バーゲンを待つ人もいる。

どうしても買わなければならないクリスマスプレゼント用のおもちゃ等がブラックフライデーの対象となると消費者は喜ぶかもしれませんが、お店側の本音からすると、「定価でも売れるならばそれに越したことはない」ということになってしまいますね。

日本の場合、12月はボーナスに始まり、クリスマス、お正月準備と消費意欲が盛り上がる大事な 1ヶ月になります。その大事な需要の先食いを「セールで」と言うのは本末転倒になってしまいますよね。

売り手都合の「押し売り」はお客様が簡単に見抜く

普段のセールスプロモーション(販促施策)でも同じですが、例えば、シーズンイベントでいうと比較的新しい記念日として「孫の日」というのがあります。

「孫の日」は、1999年に日本百貨店協会が制定したもので、9月第三月曜日の「敬老の日」から1か月後の、10月第三日曜日とされています。

この記念日は、バレンタインデーとホワイトデーの関係のように、おじいちゃんおばあちゃんから孫へお返しする意味合いで制定され、消費を活性化させる意図があるのではないかともいわれています。意味を言われれば「あぁ、そうか」となりますが、そもそもの意味や意義が伝っていないため、存在さえ知らない消費者の方も多いと思います。

消費者は非常に敏感なため、そういった売り手側の“売りたい”心情が先に透けて見えてしまうと、面白がったり、支持してもらえません。イベントとして定着しないんですよね。 やはりお客様に売り手の“売りたい”気持ちだけではなく、そこに楽しさや新しい発見、意味が伝わってこそイベントとして定着するのではないでしょうか。

イベントは常に変化をしている生き物

母の日と言えば、一昔前までは赤いカーネーションをプレゼントするのが一般的でしたが、今は花以外にも人気のスイーツをプレゼントしたり、あるいは一緒に食事に行くなど、「お母さんに感謝を伝える日」としてその行動は多様化してきました。節分も、多くは「鬼は外、福は内」と豆をまく日だったのが、昨今は「恵方巻を食べる日」という文化が色濃くなってきました。

そもそも恵方巻は関西のある一部の地域に伝わる行事であり、具材も今売られているものとは比較にならないほど簡素なものでした。

それが1990年代後半から2000年代前半に、大手コンビニが恵方巻を全国に展開したところその風習の楽しさが加わって一気に火がつきました。今流行りの「コト消費」のパイオニア的な代表格と言えるのではないでしょうか。今や小売業界各社も独自の恵方巻を競い、近年では恵方巻にとどまらず、ロールケーキを恵方巻に模したものまで発売されるなど、すっかり広く普及し食卓を賑わしています。

このようにイベントが広く浸透するには、お客様が楽しめるか、面白い要素があるのかが大変重要になってきます。 ごく限られた地域で当たり前に行われていることでも、他の地域から見ると新しく、楽しく、面白い。だからこそ広まるのでしょう。そしてそれが時間と共に進化してくのが日本ならではだなと思います。と同時にこのロジックに大きなヒントが隠されていると思うのです。

日本人流のアレンジがブラックフライデーの可能性を広げる

ブラックフライデーと同様にクリスマスやバレンタインデーもキリスト教を起源とし欧米から伝わってきたイベントですが、元祖のものとは似て非なるものに変化を遂げています。

バレンタインデーにチョコレートを贈る日本の風習は、1950年代半ばに、あるデパートがキャンペーンを行ったのが始まりで、その習わしが若者にウケ、1970年代後半には「女の子が男の子にチョコレートを渡して告白する日」と定着していったそうです。

クリスマスはキリストの誕生日をお祝いする日で、アメリカでは25日に家族で食事をし、大切な人にプレゼントを渡す日というように過ごすようですが、日本では24日のクリスマスイブにチキンやケーキを準備し、恋人同士で過ごす日という雰囲気もあると思います。

このように、欧米などで開催されているイベントはキリスト教に紐づいていることが多いため、多宗教の日本にそのままイベントを持ってきてもなかなか根付きません。

それを日本人流にアレンジし、小売り側でも毎年知恵を絞りながら消費者にウケるイベントに仕上げていく必要がありますし、逆に消費者発信で楽しみ方を見つけられると、徐々に定番のイベントとして根付くのだと思います。 それと同様に、現時点では「特売日」という立ち位置になっているブラックフライデーも、トライアンドエラーを繰り返し、日本流に上手にカスタマイズできたときに非常に面白いイベントになる可能性があるのかもしれません。

まとめ

ブラックフライデーを含め様々な施策が行われている昨今ですが、仕掛け側の思惑が見え隠れしている施策は、消費者側にも直ぐに気づかれてしまい、なかなか定番のイベントとしては定着しにくいもの。この事は、商売をしていく上で常に意識しておかなければならないことだと思います。

小売業界としてブラックフライデーの施策を通じて、何をどうしたいのかを戦略的に考え、その意義が消費者心理と合致したときに、はじめて面白いイベントが出来上がるのだという事を念頭に置き、貴店でもブラックフライデー施策を行ってみてはいかがでしょうか。

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