コラム
販促・集客
~大手スーパーマーケット元副店長が語るシリーズ⑪~少子高齢化は商機!プロモーションを拡大し変化し続ける店が勝つ
「少子高齢化」が進む日本では、年金や医療費増大、労働人口の減少など様々な影響や課題があります。もちろん、小売業界でも、人手不足や市場の縮小など避けられない問題が多数あります。では、これからの時代、小売業界は「少子高齢化」にどのように立ち向かえばよいのでしょうか?Y氏の意見を聞いてみました。
<Y氏プロフィール>
1993年某スーパーマーケット入社。主に本社のセールスプロモーション部で活躍された後、店舗にてその知見を活かした店舗づくりや販促を実施。画期的でユニークな手法を駆使され成果をあげられました。
本社勤務時は、朝ネットで注文すると夕方届く“ネットスーパー”を立ち上げ、大ブレイクを起こします。またShufoo!(シュフー)を導入し、店舗ページからチラシを確認できるように整備。2010年には、いち早くスマホ公式アプリをリリース。
長期に渡り会社のIT事業に携わり実績を残した後、2016年、副店長として店舗へ配属。ITやマーケティング戦略の知見と、パートナー社員の知見を最大限に活かし、さまざまな取り組みを実施しました。
そもそも横並びで一斉に少子高齢化している地域はない
近年の日本では、出生率の低下によって子供の数が減少し、2005年には初めて人口が自然減となりました。毎日のように少子高齢化問題がニュースや新聞などで取りざたされ、言うまでもなく、小売業界にとっても大きな問題です。
企業は売上の維持またはアップさせる為、日々施策を考え、業務邁進に必死です。しかし全て同じ施策で人口減に対応すれば良いかというと、そうではありません。
日本全体で少子高年齢化という言葉を考えると、出生率が低下し高齢者の数が増える、と考えがちですが、全ての地域をその考え方で一括りにしてしまう事は危険です。
少子高齢化と言っても、同じ構成比の町は1つとしてないのです。
例えば、高度経済成長期、郊外に住宅地用として大規模開発された「ニュータウン」は、同じ世代の家族が一斉に団地に移り住み、子供たちが成長して独立した現在、街全体が高齢化していると考えがちです。
実際に見に行ってみると、エレベーターの無い住棟は高齢者の生活にそぐわないため、リノベーションされ若年世帯の受入れを積極的に行っているところもあります。空き部屋をシェアハウスに作り変え、低家賃で提供する地域もあります。相対的に見ると、実は若年齢化しているという地域があるのです。
新店舗を出店する際は、商圏のマーケティングを徹底的に行い、その地域にあった店づくりをしているケースが多いと思います。しかし出店から数年もすると商圏は変化していきます。商圏が変化しているにもかかわらず、出店当初の環境が継続していると考え、同じことを継続し、結果として売上減少を招いている店舗が多いように感じます。
利益を獲得するために短絡的にプロモーション費を削減し利益を確保しようとすると、より一層状況の悪化を招き、少しずつ生じていた歪が、気付いた時には大きなギャップとなり取り返しのつかない事態に発展していくのだと考えます。
環境は常に変化しています。チェーンストア理論(※)を掲げていては、その変化を読み取り、店舗ごとに対応していくことは難しくなります。
マーケティングを強化し、正しいお客様を知って、地域のお客様にあった店づくりをしていくことが急務であり、正しい認識から対策を立てる重要性にいち早く気づくべきです。
※チェーンストア理論とは
複数店舗を持つ小売やサービス等の企業が、本部主導で運営することで効率化を図るための理論。
プロモーションは今こそ拡大させるチャンス
地域のお客様から選ばれる「ごひいき店」になるために、プロモーションを強化すると同時に、他のお店との優位点を見つけなければいけません。
差別化ポイントとしてわかりやすいのは、商品とサービスです。
「美味しい」「鮮度がいい」「おしゃれ」「壊れない」など、このお店に行けば品質の良い商品が手に入ると思って頂けことが大切です。
その商品に質の高いサービスがついてくれば尚良いという事になりますが、良い商品、良いサービスがあっても、知ってもらえなければお客様には来ていただけません。
前述のとおり、利益を得るためにプロモーション費を削ってしまう企業が多くありますが、それはお客様との接触の機会を減らし、売上を放棄しているのと同じです。
お客様の数を増やすためには「既存顧客+新規顧客-離反客」がプラスになっていなければいけないため、お店に来てもらうためのプロモーション費を削減するのは非常に危険です。
つまり「プロモーション・サービス・商品」は三位一体だという事です。
プロモーション費が無駄な費用だと考えている企業は、今までのプロモーションに効果があったのか、売上に繋がったのかどうかが不明瞭だったからではないでしょうか。
経費削減の重要なポイントは、今まで10使っていた経費を7に減らすのではなく、10の使い方を考え、最大限に効果を得ることであり、使い方のバランスを考える事が非常に重要です。
例えば販促一つとっても折込チラシやWEBアプリ広告などと多岐にわたり、複数の担当者が担っていることが多くありました。
私が勧めるのは、それを「ワンソース・マルチユース」で行うことです。
つまり、1つのものを軸に全ての販促物を作る、ということです。さらに、このワンソースをデジタル化する。すると、WEB広告や折込チラシなど様々なコンテンツに一貫性が生まれ、企業ブランディングにもなる上に、制作物ごとに一から作る必要がないので担当者の負担を軽減することができ、本来の接客などのサービス面の業務に集中することができます。
また、デジタル化することにより、どのようなプロモーションをした時に売上が上がったかなど、効果測定も可能になり、より効率的にお客様との接点を増やすことができます。
現在の小売業界は人を減らし、商品の質を落とし、プロモーション費を削るという縮小均衡になっていますが、こういう時期だからこそ、プロモーションを控えているライバルに差をつけるチャンスとも言えます。
過去の考え方から脱却し、少子高齢化を商機ととらえ、三位一体のバランスを正しく把握し、削減されがちなプロモーションに人材や費用を投入するべきだと考えます。
環境の変化に対応できない店舗は淘汰される
少子高齢化のもう一つの問題点として、労働力が確保できなくなるという点が挙げられます。
小売業界は労働集約型産業であり、接客対応を中心に、仕事の大半を人間の労働力に頼ってきました。
労働減の事態に陥ると、例えば今まで10人で行ってきた仕事を5~6人でやりこなさなければならなくなり、生産性の低下を引き起こし、人材が疲弊し、離職率が上がる可能性もあり、悪循環となりかねません。
小売業界は、お客様の数が減る事に対する危機感は強いのですが、労働力の減少に対する危機感は薄いように感じています。
その問題点にいち早く気づき、対策をしていかなければ企業の発展は望めないのではないでしょうか。
これからの小売業界は、お客様のニーズをつぶさにキャッチし、その地域の特徴をとらえ、お客様に対してサービスを提供する場所に人員は配置されるべきであり、地域に寄り添いながら変化できない店舗は自然と淘汰されてしまうでしょう。
そういった最悪の事態を招かないためにも、常にマーケティングを怠らず、地域や個店に合ったプロモーション活動を行い、新しい商品やサービスを提供し続けることで、お客様に選んでいただける店舗に変化し続けられるのだと思います。
まとめ
改めて俯瞰して自分の住んでいる地域を見ると、駅前の再開発が進み、新しいマンションが次々と建てられ、街中では小さなお子様を連れた若いファミリーを多く見かけることに気づきました。少子高齢化と一言でいっても地域ごとに特徴は様々ですから、画一的なサービスや商品を提供するのではなく、地域にあった施策を打つことが未来を作るのだと思いました。また、状況を冷静に判断し、お客様に選んでいただけるサービスを提供するために変化し続けることは、小売業界のみならず、全ての企業に通じる考え方なのだと思います。
<大手スーパーマーケット元副店長が語るシリーズ これまでの記事はこちら>
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