コラム 販促・集客
【販促dig!!/第3回 植野大輔氏<前編>】リテール変革プロフェッショナルとしてのキャリアと人生のパーパスとは?

2020年10月01日
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▲左からホストの早川礼とゲストの植野大輔さん

時代の流れと共に変容していく「販促」の在り方。しかし、何が正しいのか、未来はどう進むかの答えは掴みにくいものです。そんな疑問の答えを探るべく、販促の最前線にいる有識者を招き入れ、幅広い視点から「販促」をテーマに対談形式で語りつくす本連載。

第3回のゲストは、DX JAPAN代表の植野大輔氏。新卒で入社した三菱商事時代にローソンに出向しPontaポイントの立ち上げを経験、ファミリーマートではファミペイの立ち上げを主導するなどコンビニチェーンを中心に八面六臂の活躍を見せる、リテール変革領域の第一人者です。

そんな植野氏に、「Shufoo!(シュフー)」の運営会社であるONE COMPATH 代表取締役社長CEOの早川礼が、キャリアやリテール・マーケティングの事例や未来についてたっぷりとお話を伺いました。今回は3編に渡ってお送りします。<前編>では、植野氏のキャリアやキャリア観を中心にお送りします。


早川礼(以下、早川):初回では植野さんのキャリア観についてお聞きします。まずはこれまでのご経歴からお聞きできたらと思います。

植野大輔氏(以下、植野) :大学卒業後に三菱商事に入社して、情報産業グループというところに配属されました。WOWOWや衛星放送といったメディアの投資先をどう大きくするか、という仕事をしていました。三菱商事と電通とのジョイントベンチャー企業でNHKオンデマンドの立ち上げもやりました。

早川:メディア関連の業務をされていたんですね。ローソンに出向されたのはその後ですか?

植野:そうですね。2009年にローソンに出向して、Pontaポイントの立ち上げに携わりました。その後はネットスーパーやEC分野に進出したり、最後の1年ではシリコンバレーのスタートアップ企業との提携を行ったり。三菱商事には結果的に13年半いました

偉大なる経営者との出会いが、挑戦を決意させた

早川:その後ボストンコンサルティンググループ(BCG)にいらっしゃったんですよね。経緯はいかがでしょう?

植野:ローソンで新浪剛史さんに出会って衝撃を受けたんです。新浪さんは43歳でローソン社長に就任されて、当時私は37歳手前ほどでしたが、とてつもないギャップを感じました。「自分はあと数年でこんな存在になれるのか」と。それでヘッドハンターに相談しました。紹介されたBCGはプロフェッショナル意識と人間的な魅力を持った方々ばかりで、とてつもなく面白い会社だと感じました。

早川:そして、BCGの後にファミリーマートにいらっしゃったわけですね。

植野:はい。2016年にサークルKサンクスとブランド統合するタイミングで、元ファーストリテイリング(ユニクロ)の副社長だった澤田貴司さんが外部招聘されました。その澤田さんに声を掛けていただいたんです。

全社改革のヘッドとして業務改革を推進

早川:業務としてはどんなことをされていたんですか?

植野:ファミリーマートの最初の1年間は、改革チームのヘッドとして、店舗業務、マーケティング、アライアンス、インバウンド、人手不足の対応など何でもやりました。最初に取り組んだのは店舗業務オペレーション改革です。店舗オペレーションの現状を把握するため、店舗スタッフが何にどれだけ時間をかけているのかを調べたこともあります。店舗に行ってストップウォッチで業務時間を計ったんです。例えば宅配便は14種類もあって、それぞれやり方が違う。長さと重さの計り方や店内端末のファミポートを使う必要があるものなど様々で、宅急便業務のマニュアルが100ページもあるんです。お年寄りや外国人スタッフもいますし、これでは難しい。そこで、4枚の下敷きチャートを作成して、お客様と指さし確認をしながら出来るような仕組みを作りました。

また、当時はDX(デジタルトランスフォーメーション)なんて言葉も今ほどトレンドではなかったのですが、今思えば大きなDXの一歩だったなと思うことに、2017年に主導したGoogle社の「Gsuite」の導入があります。Gsuiteは、ファミリーマート社員の仕事の仕方を、大きく変えました。例えば、災害対応です。最近は、台風洪水や地震など災害がとても増えています。以前は、各エリアのリーダーが店舗の状況をとりまとめてボトムアップ形式で報告され、レポートが経営陣にあがるまで時間を要していました。ですが、Gsuiteだとアンケート機能を使って、災害が起きた時には、営業可能な店舗、時間を要する店舗、レスキューが必要な店舗を報告してもらって、全国の状況がグラフでリアルタイムに把握できるようになりました。コロナ禍の前に、先んじてこのような改革を進めていて、本当に良かったなと思います。

マーケティング本部長からデジタル戦略部長へ

植野:改革2年目になると、澤田さんが改革の中心をマーケティングに移したいと言って、マーケティング本部を立ち上げることになったんです。それまで経営企画本部にマーケティング室があり、商品本部にも販促部署があったのを、本部として一か所に集めました。そこではマーケティング本部長として、全社施策をマーケティング本部が中心となって営業本部、商品本部と完全連動して推進する体制を作りました。さらにマーケティング・リサーチを内製化させるチームを作ったり、香取慎吾さんの起用によるクリエイティブ刷新もしかけました。そんなマーケティング改革を進めていたところ、全社方針としてデジタル戦略を待ったなしで加速させる必要があるという白羽の矢が当たって、デジタル戦略部長になりました。「2019年7月にペイサービスをローンチする!」と期日が先に決まって、デジタル戦略部が始動したのが2018年11月です。つまり、たったの8か月でゼロから「ファミペイ」を開発するというミッションでした。

早川:「ファミペイ」を作るきっかけは何かあったんですか?

植野:ファミリーマートは、競合チェーンと比べてデジタル戦略にかなり出遅れていました。投資家やアナリストから、デジタル戦略は今後の企業価値を左右すると言うプレッシャーもあって、イッキに巻き返しに行く必要がありました。

早川:先に期日が決まった中で、植野さんや関わる方は相当に大変だったのではないでしょうか。

植野:私もいくつもの会社組織で働いて来ましたが、ファミリーマートのデジタル戦略チームは、ファミペイのプロジェクトを通して強く鍛えられ、日本屈指の部隊になったと本気で思います。ファミペイは、10年に1度の大プロジェクトでした。でも実は、ファミペイだけじゃないんです。ファミペイばかり注目を浴びますが、デジタル戦略チームでは、ファミペイを立ち上げながら、もう一つ、ポイントのマルチ化プロジェクトも背負っていました。これもファミペイに負けないぐらい大変な、10年に1度と言える大プロジェクトです。それまで12年間、Tポイントだけだったファミリーマートが、dポイントと楽天ポイントのポイントプログラムを導入して、3種類のポイントにマルチ化させるプロジェクトです。10年に1度クラスのプロジェクトを1年で2つ、並行しながらやったわけです。デジタル戦略部は、最初は10名ぐらいからスタートして、最終的には外部の方も含めて60~70名にまでなりました。

早川:7倍!

日本企業のDX支援を決意し、独立

早川:それが独立される直前の頃のお話ですね。

植野:そうですね。2020年3月に「DX JAPAN」を作りました。デジタル後発のファミマが、8か月でペイサービスであるファミペイを立ち上げ、そしてローンチから8か月で500万ユーザーの規模にまで大きくなったということで、多くの小売などリアル企業の方から内々に話を聞かれるようになりました。今後はそういった企業を支援していくことで、日本のDX(デジタルトランスフォーメーション)のために貢献できたらと考え、独立することにしました。

早川:植野さんのような方ですと慰留されたかと思いますが…

植野:実際に澤田さんに伝えた時は「社長としては引き止めなきゃいけないが、人間としては応援するしかない」と背中を押していただきました。男気を感じましたし、こんなリーダーに出会えたことに感謝しています。

早川:かっこいい話ですね。では、DX JAPANでされていることを改めてお聞かせください。

植野:企業のDX推進にかかわるあらゆるテーマをやっています。DXとは「変革」ですから、基本は経営トップや事業責任者と二人三脚です。DX推進の中で出て来る経営レベルの論点、アジェンダをやっつけながら、同時にデジタルチームのメンバーのスキルアップ、人材育成も担っています。

早川:今後もきっと精力的にいろいろな取り組みをされるんだろうとお聞きして思いました。小売に戻る可能性はありますか?

植野:なくはないと思います。「もう植野さん、小売は十分でしょ」って言われたこともありますが(笑)あまり先のことは決めないんです。決めていることは、まず目の前の1年は日本のDXを、DX JAPANで推し進める。その先のことはNOプランです。

人生のパーパスは、世直し?「ありがたいキャリア」

早川:植野さんの人生のパーパス(存在意義、目的)をお聞きしてみたいのですが、いかがでしょう?

植野:うーん…他人様の会社には「DXのために、今こそコーポレート・パーパスに立ち返るべし!」と言っているのですが、自分事となると難しいですね(笑)。あまり考えず、行き当たりばったりで生きるタイプなんです。コネクティングドッツ(点と点を繋いで新しい未来を創っていくこと)という言葉の通り、振り返ると全て繋がっていますが、まったく選んでキャリアを作ってきたわけではないんです。

三菱商事の最後の日、ローソン社長だった新浪さんに挨拶に伺いました。新浪さんから、「(転職先であるBCGに)どれくらいいるつもりか?」と聞かれ、「石の上にもまず3年です」と答えたら「よし、じゃあ3年したら戻って来い」と言っていただきました。実際に3年経ったら新浪さんはローソンとは別の会社にいらっしゃったので、「どこに戻ればいいのか」と思いましたが(笑)、そんな頃に澤田さんから声を掛けていただいて、結果的に「お店の色」は変わったけれどコンビニの世界に戻ったわけです。なんと素晴らしいチャンスがやってくるのだろうかと、と思いました。新浪さんや澤田さんと仕事できたことにはとても感謝しています。ありがたいキャリアだと思っています。

最初の質問に戻って、私のパーパスはと言うと、世直しをしたい、ということでしょうか。ボランティア的な社会貢献ではなくて、何か世の中でズレているもの、不合理を力づくで引きずり戻すことに、腕が鳴ります。

早川:「世直しをしたい」、素敵ですね。貴重なお話をありがとうございました。

次回の<中編>では、植野氏が実際に行った事例についてお送りします。


取材協力

DX JAPAN
日本から本物のDX企業10社を生み出すべく、  
圧倒的な実務家目線で、デジタルを中心とした企業変革を支援
http://dxjpn.com/

【販促dig!!】
第1回・前編 リアル店舗の販促にも活きるデジタル販促の「今」とは? デジタルを使った販促の可能性を探る
第1回・後編  「このお店をリピートしたい」と思わせるためのデータ活用方法とは? デジタルを使った販促の可能性を探る
第2回・前編 情報のデジタル化を進める必要があるのか?小売業販促の課題と解決策
第2回・後編 令和時代をサバイブできる販促の新常識とは? 小売業販促の課題と解決策
第3回・前編 リテール変革プロフェッショナルとしてのキャリアと人生のパーパスとは?
第3回・中編 コンビニは店舗スタッフこそが源。だからマーケティングは社内外で同じくらい力を入れる
第3回・後編 「日本に足りないのはX。本気の変革です

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