コラム 販促・集客
【販促dig!!/第6回 ヤプリ 島袋孝一氏<前編>】人を巻き込むスペシャリスト

2021年09月22日
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左: ホストの早川礼   右: ゲストの島袋孝一さん

時代の流れと共に変容していく「販促」の在り方。しかし、何が正しいのか、未来はどう進むかの答えは掴みにくいものです。本連載は、そんな疑問の答えを探るべく、販促の最前線にいる有識者をお招きし、幅広い視点から「販促」をテーマに対談形式で語りつくす企画です。

第6回のゲストは、株式会社ヤプリの島袋孝一氏です。2004年に株式会社パルコに入社し店舗リーシングや販促宣伝などを経て、2013年よりデジタルマーケティングに従事。2016年よりキリン株式会社にてキリンの全ブランドを束ねるホールディングス部門でデジタルマーケティングを手がけ、2019年、アプリをノーコードで開発・運用するプラットフォーム「Yappli」を提供するヤプリへ。コロナ禍に突入後、毎週開催のオンラインセミナー「週刊ヤプリ」を立ち上げるなど積極的にセミナーを開催し、これまでに2020年から開始したウェビナーでは累計273名の社外ゲストと180本以上のセッションを手がけていらっしゃいます。

今回も、「Shufoo!(シュフー)」の運営会社である株式会社ONE COMPATH 代表取締役社長CEOの早川よりお話をお聞きしました。前編では、パルコ時代のお話を中心にお送りします。


運命の出会い―2004年、パルコに入社

早川 礼(以下、早川): これまでのキャリアについてお聞きします。最初はパルコさんですね。

島袋孝一 氏(以下、島袋):はい。2004年に新卒でパルコに入社し、2016年までいました。これは大学時代の2つのアルバイト経験が大きな原体験となっています。大学時代にフルコミットしたのは大学生協での本屋さんのアルバイトでした。夜間の大学だったので、週5で昼間にバイトをして夜間に大学、という生活です。後半2年間では日本経済新聞社の日経MJの広告局でアルバイトもやりました。流通現場とメディアという2つのアルバイト経験は、大きな原体験になっています。

早川:同世代かと思いますが…就職氷河期でしたよね?

島袋:そうですね。あらゆる業界を受けましたが、パルコしか内定がなかったです(笑)。ただ、運命の出会いというか、最近ではカルチャーマッチという言葉もありますが、とても居心地がよかったです。パルコは小売の側面もあるし、ライブハウスや劇場、アートミュージアムもあってカルチャーの発信地でもある。他社さんでやっているところもあると思いますが、パルコは取り組みとして早かったですし、僕は学生時代に音楽もやっていたので自分のコアに通じるところがありました。

「ほぼ全域を担当しました」

早川: パルコではどんな職種を経験されたんですか

島袋: パルコは商業ディベロッパーなので、不動産誘致に関わることは全てやりました。店舗誘致が主な仕事ですね。レストランやファッション雑貨、飲食、GMSの誘致の担当もしました。これらのテナントさんの出店交渉はもちろんですが、他にも広告や販促、集客、総務や経理も担当しました。総合職でしたので全国転勤もしまして、大分に3年、静岡に2年、大津に半年いました。2004年から2016年までいる間に、商業施設運営に必要なほぼ全域を担当しました。オール範囲のMD(マーチャンダイザー)をやってきた経験は、僕を作っている構成要素といえます。

早川:プロデューサーっぽいですね。パルコの売上があがるためにイベントを仕掛けたり?

島袋:パルコには2通りのお客様がいます。買い物をするお客様と出店するテナントのお客様ですね。それが面白いんです。パルコはそもそも在庫を持たないビジネスモデルなので仕入れの概念がありません。僕自身が接客をしないかわりにテナントへの指導はします。

もちろん売上もあるけれど、商業ビルのバロメーターは来店・集客数なんですね。リアルに足を運んでもらうきっかけをどう作るかです。お客様に来てもらうためのコミュニケーションプランを考える際は、テナントとコンシューマー、BtoBとBtoCと両方の視点で考えます。

早川:テナントと一般のお客様の両方の要素で考えるが故の難しさはあるんですか?

島袋:思考回路が違うと思います。テナントが喜ぶ施策と一般のお客様が喜ぶ施策は違う。また、同じファッションのテナントでも低価格帯のお店と高単価商材のショップだと思惑は異なるけど、パルコではビルの総体的なものとして魅力を考えていきます。いわゆる百貨店さんとは違うのではないでしょうか。この思考はプロモーションを考えるときも同様です。

位置情報ゲーム「Ingress」とのタイアップが話題に

早川:面白かったことというと何でしょう?

島袋:地域や店舗ごとに色が違うことを生かして、全国的じゃなく、特定の場所の特定の方たちに喜んでもらえるような企画を現場の判断で実施できたことは面白かったです。

「Ingress(イングレス)」というGoogle社内のスタートアップから誕生した位置情報ゲームがありまして、2015年にタイアップしたことがありました。僕自身が好きでやっていたゲームです。このゲームをするプレイヤーのことを「エージェント」といい、仙台パルコの担当に相談して、「ようこそ仙台へ、エージェントたち」という懸垂幕(屋上から吊り下げられている垂れ幕)を2日間出しました。ほとんどの人は知らないかもしれないけど、エージェントたちからはとても話題になりました。思ったことを実現できるのはパルコならではだし、僕のチームだからできたことだと思います。

早川:では、苦労された点ではいかがでしょう?

島袋:テナントスタッフのケアでしょうか。どれだけビルに集客ができても現場のスタッフのモチベーションを維持しないと売上を作ることはできないので、現場の協力をどう仰ぐのかは苦労しますね。僕にも接客の経験はありましたが、継続的な「輪づくり」は苦労しました。

難しい言葉を使わない

早川:現場のスタッフさんを巻き込むために必要なことは?

島袋:例えばオムニチャネルやO2Oといった難しい言葉って伝わらないと思うんです。そこで、思想としては同じことなんだけど、オムニチャネルを「“24時間パルコ”を実現しよう」と表現しました。スタッフに実際にやってもらうことはショップブログを書くことだったり、またLINEでクーポンを配信したりしましたが、店舗が営業していない時にも24時間パルコを楽しんでもらおう、そのきっかけ作りをしようという概念がありました。

ショップブログについては書き方講座も開催しました。北海道から熊本まで全国の店舗をまわり、なぜブログをやらないといけないのかから説明しました。今ではすっかり確立されたWeb接客のはしりをやっていたと思います。ジョブローテーションでデジタル部門に配属された2013年頃の話です。

早川:ブログを書いてもらうって大変ですよね。

島袋:そうですね。コロナ禍の1年でデジタルに対する意識は随分変わりましたが、パルコでは早いうちに種まきができたように思います。僕自身はデジタルに関して結構後発組だったので、積極的に他社さんの先行事例を聞きにいきました。その時に横のつながりができたことは、貴重な機会でしたし、今でもそのご縁が生きています。

キリンでデジタルマーケティング

早川:そして2016年に転職した理由は?

島袋:デジタルマーケティングの領域でもっとチャレンジしたいと思ったんです。そしてキリンに行きました。当時のCMOが社内横断型のデジタル部門を作ったばかりの頃でした。キリンビールやキリンビバレッジ、メルシャンなどブランドごとに分かれている組織を、キリン全体で横串で支援できるようにとできたホールディングスの部門です。キリンではちょうどデジタル部門において、中途の人を受け入れ始めた時期で、たまたまタイミングが合いました。

早川:キリンではどんなことをされたのでしょう?

島袋:その横断組織の中で、キリン全体として顧客にどう接点を作り、どうメッセージを作っていくかというコミュニケーションプランを考えていました。具体的には、ソーシャルメディアの運営やLINEと連動する自販機のプロモーション、社内外でのデジタル講習会の実施、居酒屋やスーパーのデジタルメディアの支援などです。営業担当さんに同行したこともありました。キリンもBtoCとBtoCと両方あったので、やっていることはパルコ時代とけっこう似ていました。

2,000万人のLINE友達に店舗送客施策

早川:特に印象的だったことは何ですか?

島袋:僕はLINEにコミットしていました。当時、キリンのLINEアカウントに登録している友達は2000万人以上いて、パルコもLINEを担当していましたが、友だちの数が400~500万人くらいだったので     大手メーカーは規模がやっぱり違うなぁ、と(笑)。

例えば、コンビニに送客する施策としてマストバイキャンペーンや先着プレゼント、コンビニの引き換えクーポンなどを手がけて、コンビニの棚の確保と瞬発力ある売上を作るわけですね。今でもやっていますが、そのはしりをやっていました。全国で     実際に商品が動くんです。パルコ時代とは異なった規模ですし、より先進的な取り組みでした。自販機連動企画もプロジェクトを一緒にやらせていただきましたが、前例のない企画で面白かったですね。

早川:ところで様々なSNS運営をされていますが、気を付けていることはありますか?

島袋:パルコやキリンではTwitterなどのSNS運用もやっていて、当時からSNSのリスクは社内で細心の注意を払っていました。その時のヒントは、東急ハンズ出身で現在はチョコレート「Minimal」の緒方恵さんの言葉から教わったシンプルで、印象的な言葉があります。「リアル(対面)で言わないことはデジタル(オンライン)でも言わない」というもの。リアルでは目の前の人に、悪口は当然言わないし、空気を読みますよね。個人にしろ、法人にしろ、炎上するときは、言わなくてもいいことを言ってしまったときだったりする。もちろん僕自身大なり小なりの失敗経験もありますが、これは今でも大事に思っている言葉です。

3社目でヤプリへ

早川:キリンは3年いらっしゃって、2019年1月からヤプリですね。

島袋:キリンのデジタルマーケティングが成熟し、役割的に種まきが終わったように感じた頃でした。もともとヤプリ社長の庵原とは知り合いで、SNSのメッセンジャーで「僕の居場所、ヤプリにありますかね?」と聞いたら「あるよ」って言ってもらえて、入社しました。 (*実際には、正式な選考を経ています。)

早川:メッセンジャーで!では、今の業務内容は?

島袋:実は僕、パルコ、キリンと、3社をまたいでもあまり変わっていないんですよね。 1社目のパルコではテナントの営業支援の場がメイン。2社目のキリンでは主にコンビニ・スーパー、居酒屋のための施策。3社目の今は、自社アプリを作るためにファッションやスーパーといったリテールを支援している。導入企業数は550社以上ですが、その半分近くが「リテール」なんです。今は、パルコやキリンの時のような直接的なBtoCの領域はあまりないですが、顧客接点の“場所”を用意して、生活者にお客様に喜んでもらうっていう意味でいうと、あまり変わらない気がします。

次回の<後編では、ヤプリでのマーケティングのお話を中心にお伝えします。


取材協力

株式会社ヤプリ
アプリプラットフォーム「Yappli」を開発・提供しているヤプリは、Mobile Tech For Allをミッションに、モバイルテクノロジーで世の中をもっと便利に、もっと楽しくすることを目指しています。
https://yappli.co.jp/

【販促dig!!】
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第1回・後編  「このお店をリピートしたい」と思わせるためのデータ活用方法とは? デジタルを使った販促の可能性を探る
第2回・前編 情報のデジタル化を進める必要があるのか?小売業販促の課題と解決策
第2回・後編 令和時代をサバイブできる販促の新常識とは? 小売業販促の課題と解決策
第3回・前編 リテール変革プロフェッショナルとしてのキャリアと人生のパーパスとは?
第3回・中編 コンビニは店舗スタッフこそが源。だからマーケティングは社内外で同じくらい力を入れる
第3回・後編 「日本に足りないのはX。本気の変革です
第4回・前編「KPIより”儲かり続ける仕組みづくり”にコミットしたい
第4回・後編 デジタル化の中で、リアル店舗の価値を再定義して資産に変えることが大事
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第6回・後編 週刊ウェビナーは前例がないからやった

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